Lecture & Seminar      Law School

        2013 Civil Law IV-1(Financial Law 1) 民法W-1(金融取引法T)
  
Purpose


 債権債務の効力・流通・実現に関する制度の基礎知識を身につけること(法的知識の獲得)が、主たる目標である。また、常に具体的な事案を念頭において授業を進めることにより、当該制度を用いた事案の解決(問題解決能力)、契約書などを含めた事実関係の整理(事実認定能力)、および、基礎知識を前提にしたより高度な論点に対する問題意識と議論(創造的・批判的検討能力)も、従たる目標とする。さらに、金融取引に関する基本制度が、いかに深く実務に関わりいかに深く人々の経済活動の基盤になっているかを認識することによって、それを扱う法律家の使命・責任の重さも自覚できるはずである(法曹としての使命・責任の自覚)。

Summary


  民法W−T、U(金融取引法T、U)は、債権債務の効力・流通・実現・担保を主たる対象とする。民法の領域としては、債権総論の多く、および担保物権のすべてが該当する(これに、民法総則の消滅時効が加わる)。債権の代表例である金銭債権を念頭においていえば、まさに金融取引・担保に関する基本制度を扱うことになる。現実の金融取引は、そうした制度の具体的利用ないし裏づけなしには成り立たないという点で、実務上極めて重要な領域である。
 この講義は、こうした金融取引法の「前半」に当たり、債権債務の効力・流通・実現(主に債権総論の部分)を担当する。債権総論は、民法の財産法のなかでも抽象度の高い分野とされ、複数の制度の関連・交錯に配慮する必要もあるため、理解の難しい領域である。この講義の目的は、そうした債権債務の効力・流通・実現に関する基本理解を獲得し、2年次以降の発展的学習の基礎を身につけることにある。。

Plan


第1回 概説
 この講義の対象領域を概観し、ガイダンスとする。とくに、民法典の債権総則の構造と主要な規定を確認しながら、債権の意義、債権の目的、債権の効力について基本的な検討を行う。また、多数当事者債権関係、債権の譲渡、債権の消滅についても予告的に概説する。

第2回 金銭消費貸借
 金銭消費貸借にもとづく貸金債権は、金銭債権の代表例である。消費貸借は、要物・無償・片務契約という特殊な類型であり、この点に伴う要件・効果上の問題を検討する。また、貸金債権の利息に関する特別法である利息制限法も重要である。

第3回 債務不履行と強制履行
 債務不履行の種類と要件・効果について復習したうえ、強制履行とその種類、不完全債務債権が強制的に実現される方法として、強制履行を検討する。直接強制、代替執行、間接強制という3種類の方法の要件のみならず、民事執行法による手続の概要もみておきたい。判例や設例の事実関係にはしばしば差押えや競売などが登場し、その概要の理解が当然の前提になるからである。

第4回〜第6回 債権の消滅原因:弁済
 債権の大多数は、債務者の任意の弁済によって実現されて消滅する。この弁済の要件に関しては、いつ(履行期)、どこで(履行地)、誰が(弁済者)、誰に(受領権限者)、何を(債務の本旨に従った給付)を給付すればよいかを理解する必要があり、これに関連して、第三者弁済、準占有者への弁済などが問題となる。また、あわせて、弁済の効果、弁済の充当についても検討する。

第7回 債権の消滅原因:弁済の隣接制度
 債務者が弁済にとりかかり債権者が受領するまでの過程には、弁済の提供、受領遅滞、弁済供託という複数の制度が密接に関連して存在する。弁済が完了しない場合に、債務者や債権者がどのような責任を負うかは、それらの制度(および履行遅滞)に左右される。そうした関連を意識しつつ検討する。

第8回、第9回 債権の消滅原因:弁済以外の消滅原因、消滅時効
 債権が任意に実現される方法として、代物弁済、相殺、更改、免除、混同を検討する。また、債権のその他の消滅原因として消滅時効、除斥期間があり、これらも合わせて検討する。消滅時効に関しては、各債権の時効期間のほか、時効の中断、時効の援用の制度が重要である。

第10回〜第12回 債権譲渡
 債権譲渡は、現代の取引において重要性を増しているが、制度全体も判例や特別法なども合わせて複雑さを増している。とくに、譲渡禁止特約とそれに違反した債権譲渡の効力、債務者に対する対抗要件、第三債務者に対する対抗要件、異議を留めない承諾、債権譲渡特例法による対抗要件などについて、正確な理解をすることは不可欠である。

第13回〜第15回 債権者代位権、詐害行為取消権
 債権の保全的効力として債権者代位権と債権者取消権が存在し、それぞれ実務上の意義も大きい重要な制度である。債権者代位権は、本来型について債権執行との相違に注意しながら、要件、効果、転用事例などを検討する。詐害行為取消権については、法的性質、要件、効果などを検討し、取り消しうる行為を具体的に検討する。




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