2004/04/23
■■■■ 京都部落問題研究資料センター メールマガジン vol.52 ■■■■

□テレビ番組紹介□ テレビに溢れる障害者番組

 京都部落問題研究資料センターでは、2000年より「人権関係テレビ番組情報」 をホームページ上で提供している。また、メールマガジン49号より、それを メルマガでも提供している。
 この「人権関係テレビ番組情報」を見て気がつくことは、最近、障害者関連 の番組が非常に増えているということである。その原因の一つは、NHKの教 育テレビで、「福祉ネットワーク」や「きらっといきる」など、毎週連続して 放映される障害者問題専門のシリーズが増えていることだろう。これらのシリ ーズもので、「障害者」とひとくくりにされる存在が、いかに多様であるかが わかり、それぞれに具体的手立てが講じられなくてはいけないかがよくわかる。  障害者に関連した番組でもうひとつ気のつくことは、障害者の登場するドラ マの数が、増えていることだろう。この春からはじまるドラマだけでも、「オ レンジデイズ」(耳が聞こえない)、「愛し君へ」(原因不明の病気により目 が見えなくなる)、「仔犬のワルツ」(盲目)、「光とともに」(自閉症)、 「電池が切れるまで」(子どもの難病、障害者とは少し違うが)など、まさに 目白押しである。昔から、障害者がテレビドラマに取り上げられることはあっ たが、これほど日常的に登場するようになったのは、最近の現象ではないだろ うか。
 そして、単に量的に増えただけでなく、番組での障害者の扱われ方も、依然 とはずいぶん変わってきたように思う。昔の障害者の登場の仕方は、「障害と いう不幸を背負った人が、本人の類まれな才能や努力、そして回りの善意で、 清く正しく美しく生きていく」という美談にまとめられることが多かった。 まぁ、ヘレン・ケラーみたいな感じである。  しかし、最近のドラマでは、以前のようなステレオタイプな障害者像は、徐 々に影を薄くしている。「オレンジデイズ」では、主人公である耳の聞こえな い女性=萩尾沙絵(柴咲コウ)は、障害が自分の中で大きなコンプレックスに なっていて、その反動で障害者への同情をかたくなに拒むところがある。たと えば大学で開催された障害者を励ます集いに参加してはみたものの、その同情 に溢れた雰囲気にカチンときて、壇上の黒板に「FUCK YOU!」と落書きし、中指 を突き立てて会場を出て行く場面などである。  この「オレンジデイズ」は、北川悦吏子の作品であるが、彼女にはすでに、 「愛していると言ってくれ」(豊川悦司が耳の聞こえない青年を演じる)や、 「ビューティフルライフ」(常盤貴子が車椅子の女性を演じる)などの作品が あり、そこでは障害者への安易な同情や美談を批判したり皮肉ったりする場面 がちらほら出てくる。
 こうした現象を見ると、日本でもいよいよ障害者がタブーの存在から解き放 たれる時期が来たことを感じさせる。今まで日本では、障害者とは同情すべき 対象であり、またできたら触れてあげないのが良いことだというような空気が あったように思うが、最近は、話題にしてもいいという空気が勝ってきている ように思う。私が勤めている大学の人権委員会などでも、従来は委員からの発 言は少なかったが、ここ2、3年の間に、学内での障害者への待遇改善を求め る意見がよく出るようになった。
 上に紹介した障害者系のドラマなどは、まだまだ障害者の描き方に表面的な ところがあるにはあるが、障害者の存在が日常の中に溶け込んでいく中で、良 くなっていくものと思うし、そうあってほしいものである。在日朝鮮人の問題 も、以前にヒットした「月はどっちに出ている」や、このメルマガで紹介した 「GO」などで、民族的誇りに満ち満ちていない普通の朝鮮人像が模索されつ つある。こうして、旧来の差別問題がタブーを脱しつつあるのは喜ばしいこと である。さて、部落問題をめぐる表現はいかに? やや立ち遅れている感はま ぬかれないが、映像関係者に奮起を期待したいところだ。(灘本昌久)

 ※「きらっといきる」(NHK教育12) 
   <http://www.nhk.or.jp/kira/>
 ※「福祉ネットワーク」(NHK教育12)
   <http://www.nhk.or.jp/fnet/>
 ※「オレンジデイズ」(毎日放送4)
   <http://www.tbs.co.jp/orangedays/>
 ※「仔犬のワルツ」(読売テレビ10)
   <http://www.ntv.co.jp/koinu/>
 ※「光とともに」(読売テレビ10)
   <http://www.ntv.co.jp/hikari/>
 ※「電池が切れるまで」(ABCテレビ6)
   <http://www.tv-asahi.co.jp/denchi/index_top.html>
 ※「愛し君へ」(関西テレビ8)
   <http://www.fujitv.co.jp/itoshikimie/index2.html>

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