2003/11/26 ■■■■ 京都部落問題研究資料センター メールマガジン vol.040 ■■■■

□テレビ番組の紹介□
    どうする京都21「どう再生!?京の玄関口・崇仁地区のまちづくり」
                  (KBS京都、2003年11月23日放映)

 テレビ番組で同和問題が扱われるのは、12月の人権週間に人権啓発番組が放 映されるときぐらいのもので、ふだんはほとんど扱われることがない。また、 放映される人権啓発番組も、当たり障りがなくて面白みに欠ける。  しかし、今回のこの番組は、同和問題を扱ったものとしては、出色というか、 大胆というか、ともかく今まで見たこともない正直さで作られている。テーマ は、京都府最大の部落にして、なおかつ同和事業の進捗率が最も低い崇仁地区 (東七条)において、今後どのような街づくりをしていくかというものである。 とりたてて奇抜なテーマではなく、むしろオーソドックスな問題設定であろう。 しかし、中味が尋常ではない。
 まず、度肝を抜かれるのは、番組の冒頭で崇仁地区を含む京都駅周辺の地図 や空中写真が大写しにされ、さらに追いうちをかけることには、近世の絵図が 登場して、「穢多村」と描かれているところがクローズアップされることであ る。近世の古地図については、博物館の展示物に「穢多」の二文字が出ただけ で、大騒ぎする人が運動内外におり、部落問題を公然と議論していく障害にな ってきているのであるが(そのことの自己批判が先日の『解放新聞』紙上でな されているが、そのことは後日扱う)そうした、考え違いを吹き飛ばすに十分 な迫力であった。
 また、同和問題の番組は、問題が起こってはいけないので編集でいろいろカ ットする、ということが行なわれがちだが、今回は、なんと生放送で、しかも 2時間の長時間番組であった。企画したテレビ局や出演者の気迫がなせるわざ であろう。また、出演者も当たり障りなく番組を流せるアナウンサーや有識者 という構成ではなく、地元代表のNPO崇仁街づくり推進委員会の奥田正治理 事長と山内政夫副理事長(部落解放同盟京都市協議会議長)ほか、地元の当事 者をはじめ、この街づくりに関係のある都市計画の専門家や中央官庁の官僚な どである。
 さらに面白いのは、番組の冒頭で、リム・ボン立命館大学教授が問題提起を し、最近問題になっている京都市における運動団体・同和行政の不明朗・不適 切なやりかたについて「自分も不愉快な思いをした」と個人のこうむった体験 も含めて批判的なコメントをしたことである。それに対して、山内氏が自己批 判を含めた発言をしている。従来は、こうした番組において、啓発は啓発、問 題は問題(そして実は扱わない)として、運動や行政の問題点が素通りされて いるのとは違い、少なくとも問題があること自体を認めたという点で、従来の 啓発番組とは一線を画すものといえるだろう。いかにその掘り下げが番組で不 十分にしかなされていないとはいえ、運動に批判なことは爪の先ほども放送し ないという従来の不公正な態度をあらためた点で、賞賛すべきことと思う。  番組の本題自体は、部落問題解決のために部落住民主体の街づくりを展望す るNPO側と、いろんな新しい要素を怒涛のように導きいれて良い街づくりを すすめていけば、部落問題そのものが吹き飛んでしまうと考えている他の参加 者の間で、大きな認識の差があったように思える。その点は、今後すりあわせ ていかなければならない重大な論点であるので、番組の続編をおおいに期待す るところである。
 なお、12月1日(月)午前9時〜午後10時55分に再放送があるので、まだ見 ていない方はご覧になることをおすすめする。
(灘本昌久)
※ どうする京都21
   <http://www.do-kyoto.jp/>

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