2002/12/26 京都部落問題研究資料センターメールマガジン vol.018

□テレビ番組レビュー□
 「暴かれた拉致事件 すべてはここから始まった!」
            (朝日放送、12月16〜18日深夜02:19〜03:49ABC)
   (1)楽園に消えた人々〜北朝鮮帰国者の悲劇
   (2)闇の波涛から〜北朝鮮発・対南工作
   (3)空白の家族たち〜北朝鮮による日本人拉致疑惑

 さる9月17日に小泉純一郎首相が北朝鮮を訪問し、その際、金正日総書記が拉致事件を認めて謝罪したことは、たいへんな衝撃であった。もちろん金正日政権のしわざであることは、普通の判断力を持つ人には前からわかっていたことではあるが、私はよもや金正日自身が認めるとは夢にも思っていなかったので、まったくショックを受けた。その後、今まで封印されていた金正日政権の悪行の暴露番組・記事が、連日マスコミをにぎわし、今もその勢いは衰えていない。
 こうなってくると、言った者勝ちの雰囲気で、これでもかこれでもかという感じであるが、本当にそんなことが許されるだろうか。むしろ今まで真実を明らかにしてくる努力をしてきた人は少数で、大部分の人は、放置してきた責任を免れないのではないかと思う。
 上記の番組は、北朝鮮に帰国した在日朝鮮人の悲惨な境遇を告発し、日本人を拉致してきた工作員を追及し、横田めぐみさんの消息に肉薄してきた、石高健次朝日放送プロデューサー制作ドキュメンタリーの一挙放映である。横田めぐみさんが拉致された1977年からは既に15年を経た1992年5月以後の放送であるが、当時は、まだまだ北朝鮮を支持する人からの風当たりが強い時期のものであり、たいへんな努力であったろうと思う。これだけの報道がありながら、十分なアクションを起こしてこれなかったことは、私も含めて、およそ人権を語ってきた人たち総体が、胸に手を当てて反省するとともに、その気持ちを行動に移すことが必要だろう。
 それにつけても、我が部落解放同盟の北朝鮮一辺倒の態度はいかがなものか。最近では、今年の6月に訪朝団を送り、その訪問記が部落解放同盟中央本部機関紙『解放新聞』7月22日号に笠松明広編集長名で掲載されているが、まったく馬鹿げた内容である。あんなチョウチン持ちの記事は、今となっては朝鮮労働党機関紙『労働新聞』でも恥ずかしくて書けない種類のものである。いわく「拉致疑惑、不審船問題、テポドン問題などを含め、なにかあると『北が犯人、何をしでかすかわからない』という形で、共和国が犯人視されて当然、という空気が作り出される。…今回、学校、学生少年宮殿を訪れ、多くの子どもたちの栄養状態は改善されている、と見えた。子どもたちの目は輝き、自分自身が向上することが、社会全体の向上につながる、という確信に満ちた表情にあふれていた。そこは、受験競争などとは無縁な、公教育を大切にしながら、社会変革の主体としての人間を育てよう、という政策が見えた。…たしかに、いまは、世界的に孤立を強いられていることからも、いわゆる国力は強いとはいえない。しかし、緑と水にあふれ、ゆっくりと時間が流れるピョンヤンの方が、人間的だと思える。医療費、教育費は無料、というのもすばらしい、と感じられる。」
 解放新聞社には親愛なる指導者同志=金正日総書記からの伝言をコッソリお伝えしよう。「北朝鮮を支持してくれる君たちの気持ちはありがたいが、もう少しおてやわらかにお願いする。あんなばればれの内容では、ジョンイル困っちゃう。(-_-;)」(灘本昌久)

《参考データ》
・「拉致否定者たちの発言集」
   <http://rachigiwaku.tripod.co.jp/>
・朝鮮総連機関紙『朝鮮新報』による拉致疑惑否定記事
   <http://www.korea-np.co.jp/special/rachi/houseki9801.htm>


 「人権関係テレビ番組情報」は、以下をご覧ください。
<http://www.asahi-net.or.jp/~qm8m-ndmt/tv/contents.htm>