図書館のイントラネットな使い方

京都産業大学図書館報『Lib』Vol.23,no.2 1996.9.17 pp.4-7

                 一般教育研究センター講師 灘本昌久

 

 図書館を利用するには、実際に図書館に足を運んで利用するのが簡単で早道だ。論文作成の第1段階で網羅的に資料の探索をする場合は、まず図書館に出向くのが本筋であろう。しかし、論文の執筆にかかっても、調査したいことは断続的に発生する。その際いちいち図書館にでかけるのは、時間の浪費や思考の中断を防ぐ意味からも、避けたい場合が多い。特に第1研究室棟や第3研究室棟のように離れたところから図書館に頻繁にでかけるのは物理的にむつかしい。そこで、研究室にいながらにして(その点、本稿は学生諸君には直接的には有用でないが、お許しいただきたい)学内所蔵図書や情報検索サービスを利用する方法を紹介する。

 京都産業大学は、学内にKINGというコンピューターネットワークを張り巡らせており、ここでは、それを活用した利用法を紹介したい。なお、研究室のコンピュータがイーサーネットで接続されていることを前提としているが、内線(電話回線)を経由しての接続も可能であり、以下にのべる利用方法はそのまま実行可能である。(1)

 

A.学内所蔵図書の検索と利用

 京都産業大学中央図書館の書籍を利用するには、通常自分で出向くわけであるが、ここでは研究室から出ずに図書データを検索し、配達サービスを使って研究室にある棟にまで図書を配達してもらう方法を紹介する。

 

 1.中央図書館の図書データベースを画面に呼び出し、検索する。ここでの検索方法は図書館で端末を操作するのとほぼ同様である。

 2.次に、あらかじめ図書館に送信する図書配達申込の雛形を作成しておき、そこに1での検索結果を張り付ける(張り付けるといっても、実際に紙を切り張りするわけではなく、画面上でカット・アンド・ペーストという操作を行なう)。図は、図書館データベースの検索結果を配達依頼の雛形文書に張り付けている様子である。

 3.この配達申込書を図書運用課に送信する。送信には電子メールを使ってもいいし(図書館あての電子メールアドレスは ksu-lib@cc.kyoto-su.ac.jp)、ファックスでも可能である(図書館のファックスは内線2248)。ファックスの場合も紙に打ち出したものを手操作で送るのでなく、ファックスモデムを使って画面の文章をダイレクトに図書館のファックスに送信する。その方が文字が明瞭に送れるし、紙の無駄も省ける。申し込みの時間帯にもよるが、早ければ翌日の午前の学内便で図書が配達される。利用の終わった図書は、学内各所にある返却ポストに返却する。

 

B.学外所蔵資料の検索と利用

 学内に希望する資料が無い場合は、取り寄せを申し込むことになるが、その際も研究室から学内LAN(=KING)を使って申し込みが可能である。取り寄せる資料の書誌的データがわかっている場合は簡単で、あらかじめ電子メールかファックスの雛形を作っておき、取り寄せたい論文の名前や著者などを記入して、情報サービス課に送信する。

 取り寄せる論文などのデータがわかっていないときは、データの検索を依頼する。こちらもあらかじめ電子メールかファックスの雛形を作っておき、これに検索を希望するデータベースと検索内容(キーワードを自分で指定するのが好ましいと思う)を記入して図書館宛に送信するだけである。

 こうした論文の取り寄せや検索の依頼は電子メールでなくても電話やファックスで可能であるが、データベースの検索結果の受け取りは、電子メールが断然はやくて便利である。通常、検索結果は、紙に打ち出したものを学内便でうけとるか、あるいはフロッピーディスクを持っていって、データを入れてもらうわけであるが、検索依頼の書類に、自分の電子メールアドレス(計算機センターに利用申請すると、教員と学生は誰でももらえる。事務職員にはまだ発行される体制にはなっていないが、デスクワークの生産性をあげるために、事務職全員にIDが発行される時代が早晩くるだろう)を書いて、そこに検索結果を送信してほしい旨を注記しておけば、電子メールで回答が受け取れる。最近は、新聞や雑誌が全文データベースになっていることが増えてきており、検索結果を電子メールで受け取ることの利便性はますます高まっていくものと思われる。新聞記事なども、今までなら図書館に足を運んで縮刷版をひっくり返していたわけだが、今なら自分が欲しい記事をオンラインで検索してもらってその結果を電子メールで簡単に受け取ることができる。

 

C.今後の展望

 こうした利用が増えていけば、図書館資源のさらなる有効利用がすすむだろう。ただし、利用が増えれば新たな問題の発生も予想される。そのひとつは、データベースの検索依頼が現在学生を中心に急増する傾向にあり、図書館の処理が追いつかなくなる心配である。もちろん配置職員数を増やすことも必要であるが、私はむしろ個々の教員による自力での検索を奨励し、情報サービス課では、より高度な検索技法を要するサービスに力点を入れていくのが効率的だろうと思う。(2) 教員の側で初歩的な利用がすすめば、学生は教員を通じてデータベースの検索が学習できるので、一石二鳥だ。

 また、本稿で述べてきたのは、図書の利用という面でのインターネットの利用であるが、私の個人的な希望からいえば、図書の発注まで電子化していただけないものだろうか。自分の買おうとする本をなんらかのデータベースで検索して、その結果を電子メールに張り付けて注文できれば、図書の価格の抜け落ちなども防げるし、ISBN番号などもわかるので、省力化にはつながるのではなかろうか。今までは、技術的にむつかしそうに思えていたが、最近WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)で洋書や和書を注文することが多く、その経験からすると、それほど難しいことではないと感じるようになった。

 

 

(1) なお参考のため、研究室のパソコンを本学のホストコンピュータに接続する二つの方法を紹介しておく。第1は、モデムによる接続で、新たに購入される場合は、通信速度が28800bps(ボー・パー・セカンド)以上の高速なものを選ぶことをおすすめする。今だと1万円台後半からの値段で売られている。これ未満のスピードだと、インターネットでホームページ(研究機関や、企業、個人が開設している情報発信の場所)を利用するときに不自由する。第2はイーサーネット接続である。これは学内のLANに研究室のパソコンを接続するやりかたで、データのやりとりがより高速にできるし、電子メールが到着したときに、すぐにパソコン上に表示されるなどの利点があるので、可能ならばこちらをおすすめする。本学では今年の夏には、全研究室にイーサーネットケーブル(10BASE−T)が敷設され、全国屈指の情報環境が整うので、1500円程度のわずかの投資でパソコンがイーサーネットでつながることになり、モデムを買うより安くなる。新規にパソコンを購入される場合は「10BASE−T(テン・ベース・ティー)のイーサーネットケーブルが接続できる」インターフェースを装備している(あるいはオプションで付けられる)パソコンの購入をするようおすすめする。

(2) なお、学術情報センターや国内共同利用大型計算機センターのデータベースは、本学の経常費として予算申請しておけば、直接自分の利用番号を交付してもらえるので、図書館の手をわずらわせず、思った内容で検索できる。私の場合は、学術情報センターと京都大学大型計算機センターに関しては利用申請をして自分で直接検索している。

 

注記:イントラネット=インターネットの技術を企業内の情報通信システムの基盤に取り入れ、情報共有や業務支援に活用するためのシステム形態(『日経コンピュータ』より)。