LaTeX2e とは
LaTeX2e (ラテフ・ツー・イー)とは世界中で使われている組版(くみはん)ソフトです。 数式の表現力に優れているため、数学や物理業界ではレポートや論文の作成に使われています。 非常に多機能なシステムなのでこの講義ではごく初歩的な部分しか紹介できません。 入門には次のような書籍がよいでしょう。
- [改訂第5版] LaTeX2e 美文書作成入門(奥村晴彦・技術評論社)
- 文書処理システム LaTeX2e(L. ランポート・ピアソンエデュケーション)
LaTeX2e は TeX の上に組み立てられています。 TeX の聖典はこれ。
- TeX ブック — コンピュータによる組版システム(D. E. クヌース・アスキー)
TeX 文書作成の手順
1. ソースファイルの作成
エディタでソースファイルを作成します。
ファイル名の拡張子は .tex
とします。(例: report.tex)
2. DVI ファイルへの変換
ソースファイルを platex
コマンドで DVI (device independent) ファイルに変換します。
% platex report.tex
これにより report.dvi
ファイルが生成されます。
3. DVI ファイルの確認
DVI ファイルを xdvi
などのプレビューアで確認します。
% xdvi report.dvi
4. PDF ファイルへの変換
DVI ファイルを dvipdfmx
コマンドで PDF ファイルに変換します。
% dvipdfmx report.dvi
これにより report.pdf
ファイルが生成されます。
5. PDF ファイルの確認
PDF ファイルを確認します。
Ubuntu では evince
や xpdf
といったコマンドで PDF ファイルをみることができます。
% evince report.pdf % xpdf report.pdf
基本
LaTeX の基本コマンド
\documentclass[a4j]{jarticle} \title{はじめての \TeX} \author{京産太郎} \date{\today} \begin{document} \maketitle \section{はじめに} \LaTeXe (ラテフ・ツー・イーと読む) は世界中で広く使われて いる組版ソフトです(e と ( の間には半角の空白を入れます)。 数式の表現力に優れているため、数学や物理業界ではレポートや 論文の作成に利用されています。 \end{document}
\documentclass[a4j]{jarticle}
で文書のスタイルを指定します。 jarticle (通常の文書)の他に jreport (章立てのある長い文書)、jbook (書籍)などを指定することができます。 a4j は用紙サイズを指定するオプションです。\title{...}
,\author{...}
,\date{...}
で題名、著者、日付を指定できます。 日付を\today
とすると platex で処理した日時が入ります。 この内容は本文中の\maketitle
コマンドによって出力されます。\begin{document}
で本文が開始されます。\maketitle
で題名、著者、日付が出力されます。\section{...}
で節 (section) の見出しを指定します。 他に\subsection{...}
,\subsubsection{...}
などがあります。\LaTeXe
以降が本文です。 文章は適当なところで改行して構いません。 段落を改めるには1行以上の空白行で文章を区切ります。\end{document}
で終了します。
やってみよう
上の例を test01.tex というファイルに作成し、platex で処理してみましょう。
% platex test01.tex
DVI ファイルができたら xdvi でプレビューしてみましょう。
% xdvi test01.dvi
dvipdfmx で DVI ファイルを PDF ファイルに変換しましょう。
% dvipdfmx test01.dvi
evince で PDF ファイルを見てみましょう。
% evince test01.pdf
数式
数式環境
\documentclass[a4j,11pt,fleqn]{jarticle} \begin{document} \section{Riemann のゼータ関数} \[ \zeta(z) = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^z} \ \ \ \ \ % [\Re z > 1] \] を解析接続して得られる関数 $\zeta(z)$ を Riemann のゼータ関数という。 Riemann のツェータ関数 $\zeta(z)$ は、$z = 1$ で留数が $+1$ である 1位の極をもち、他の $z$ においては正則である。 また,$-2$, $-4$, $-6$, $\cdots$ を1位の零点とし、その他の零点は すべて $0 < \Re z < 1$ 内にある。 \subsection{関数等式} 次の等式が成り立つ。 \begin{equation} \zeta(1-z) = 2^{1-z} \pi^{-z} \cos\left(\frac{\pi z}{2}\right) \Gamma(z) \zeta(z) \end{equation} \end{document}
\documentclass[a4j,11pt,fleqn]{jarticle}
の 11pt はフォントの大きさを 11 ポイント(デフォルトは 10 ポイント)にするオプション、 fleqn は別行立ての数式を左寄せにするオプションです。- 別行立ての数式は
\[
と\]
の間に記述します。 数式モードでは数式用の多数の命令が使えます。 (\zeta
,\sum
,\infty
などなど) - 数式モードでは
\frac{分子}{分母}
で分数が出力できます。 \ \ \ \ \
で空白を5つ入れています。 TeX では命令の区切りになっている空白以外は無視されます。- 文章中の数式は
$...$
のように記述します。 マイナス記号は$-$
と書かないとハイフンになってしまうので注意しましょう。 \begin{equation}
,\end{equation}
の間の数式も別行立てとなりますが、数式番号が付けられます。\label{...}
コマンドで数式に名前をつけて、数式番号を参照することもできます。
やってみよう
上の例を test02.tex というファイルに作成し、platex で処理してみましょう。
% platex test02.tex
DVI ファイルができたら xdvi でプレビューしてみましょう。
% xdvi test02.dvi
dvipdfmx で DVI ファイルを PDF ファイルに変換しましょう。
% dvipdfmx test02.dvi
evince で PDF ファイルを見てみましょう。
% evince test02.pdf
図の取り込み
graphics パッケージの利用
\documentclass[a4j,11pt]{jarticle} \usepackage{graphics} \begin{document} GNUPLOT を用いて作成した $y=x \cos x$ のグラフです。 \begin{figure}[htbp] \centering % \resizebox{横}{縦}{\includegraphics{画像ファイル名}} \resizebox{.8\textwidth}{!}{% \includegraphics{xcosx.eps}} \caption{$y = x \cos x$ のグラフ} \end{figure} \end{document}
- graphics パッケージを使うと図を文書中に取り込むことができます。
\usepackage{graphics}
でパッケージをロードします。 \begin{figure}[htbp]
,\end{figure}
は図のための環境(figure 環境)です。\caption{...}
には図の説明を書きます。\centering
は文章や図を中央揃えするためのコマンドです。\resizebox{.8\textwidth}{!}{...}
は図の拡大・縮小のためのコマンドです。 この例では横幅を全体の 0.8 倍 (.8\textwidth
) とし、 高さはそれにあわせて自動調整 (!
) させています。\includegraphics{xcosx.eps}
で画像ファイルを取り込んでいます。%
以降はコメントとして無視されます。
やってみよう
Gnuplot で「y = x * cos(x)
」のグラフを作成し、xcosx.eps というファイルに保存しましょう。
% gnuplot gnuplot> plot x*cos(x) gnuplot> set terminal post eps gnuplot> set output "xcosx.eps" gnuplto> replot
上の例を test03.tex というファイルに作成し、platex で処理してみましょう。
% platex test03.tex
DVI ファイルができたら xdvi でプレビューしてみましょう。
% xdvi test03.dvi
dvipdfmx で DVI ファイルを PDF ファイルに変換しましょう。
% dvipdfmx test03.dvi
evince で PDF ファイルを見てみましょう。
% evince test03.pdf
本日の課題
プリントのいろいろな数式記号を試してみましょう。