第24回(2005年度)

@植物生理学会(新潟)

CIAT strategy forintegration of genomics approach with traditional breeding towards crop improvement.

Manabu Ishitani
(International Center for Tropical Agriculture; CIAT, Columbia)

Traditional breeding efforts are expected to be greatly enhanced through collaborative approaches incorporating functional, comparative and structural genomics. Potential benefits of combining genomic tools with traditional breeding have been a source of widespread interest and resulted in numerous efforts to achieve the desired synergy among disciplines. The International Center for Tropical Agriculture (CIAT) is applying functional genomics by focusing on characterizing genetic diversity for crop improvement in common bean (Phaseolus vulgaris L.), cassava (Manihot esculenta Crantz), tropical grasses, and upland rice (Oriza sativa L.). My presentation focuses on CIAT’s strategy to combine genomic approaches, plant breeding, and physiology to understand and exploit underlying genetic mechanisms of traits of interest for crop improvement. The overall CIAT strategy combines both “gene to phenotype” and “phenotype to gene” approaches by using gene pools as sources for breeding tools and offers broad benefits by combining not only in-house crop knowledge, but publicly available knowledge from well-studied model plants such as Arabidopsis. Successfully applying functional genomics in trait gene discovery requires diverse genetic resources, crop phenotyping, genomics tools integrated with bioinformatics and proof of gene function in planta (proof of concept). Research at CIAT on drought tolerance in common bean and aluminum resistance in the tropical forage grass Brachiaria are used to illustrate the opportunities and constraints in breeding for adaptation to abiotic stresses.

植物の「血のめぐり」を可視化する?植物ポジトロイメージング技術

藤巻 秀
(日本原子力研究所・高崎研究所)

 Positron Emitting Tracer Imaging System (PETIS)は、植物個体に供給したポジトロン放出トレーサの体内分布を非接触・経時的に観測できる装置である。これまで、H215O, 13NO3, 13NH4, H248VO4, 52Fe3+, 107Cd2+などの経根吸収とそれに続く植物体中輸送の可視化、[11C]メチオニンの転流の解析など、様々な研究に利用されてきている。これらの核種には分単位の短い半減期を持つものも多いが、サイクロトロンを備えた施設の中でトレーサ製造と植物実験を並行することによって、むしろ半減期の短さを利点とする同一個体での繰り返し実験も可能となっている。特に、窒素の吸収・輸送の研究には、従来用いられてきた非放射性同位体の15Nに代わり放射性の13N(半減期10分)が利用可能である。
 PETIS装置の最大の特長は、トレーサの植物体中の移動を動画像として得られる点にある。演者らは、これをオートラジオグラフの集積として定性的に利用することに留まらず、【2次元×時間】データと捉え、数理的動態解析によって物理的パラメータ(トレーサの移動速度、流路外への漏出の率)を定量的に求める研究を行なっている。これらのパラメータは植物の生理的パラメータ(篩管転流/蒸散流の速度、維管束から周辺組織へのunloading rate)を導くものである。一例として次のような実験を行った。ソラマメ個体の成熟葉一枚に通常空気と共に11CO2を与え、光合成産物が葉柄を経由し茎を根方向に転流する様子を撮像した。続いて、同一個体の同一葉に対し、大気の3倍程度(1000 ppm)の炭酸ガスを含む空気と共に11CO2を与え、同様に転流の様子を撮像した。両者の動画像データに対して伝達関数法による解析を行ない、茎の節間ごとに篩管転流の速度を推定したところ、高濃度のCO2を与えた場合においては茎中でほぼ一様に転流速度が上昇するという結果を得た。このように定量的な生理情報をポジトロンイメージングから得る手法は、医学分野のPET (Positron Emission Tomography) 利用においても試みが始まったばかりであり、演者らは植物研究分野での幅広い応用を目指している。

イネの電位依存カルシウムチャネル候補遺伝子(OsTPC1)の同定と機能解析

来須 孝光
(東京理科大・院・理工・応用生物化学)

 植物が光、温度、乾燥、病原菌感染など多種多様な環境変化に応答する際、細胞質中のCa2+濃度([Ca2+]cyt)の時間的・空間的変動が、細胞内シグナル伝達系において中心的な役割を果たすと考えられている。しかしCa2+シグナルが細胞内でどのように仕分けされて特異的な応答反応を引き起こすのかについては、殆ど明らかになっていない。その大きな理由は、Ca2+を動員するイオンチャネル等の分子的実体が殆ど解明されていないことにある。
 最近我々はイネから膜電位依存性Ca2+チャネル候補遺伝子OsTPC1を単離した(2002年日本植物生理学会大会; Plant Cell Physiol. 45: 693-702)。この遺伝子は植物体全体で発現し、ゲノム上に1コピーのみ存在していた。またGFP融合タンパク質の一過性発現解析の結果、OsTPC1は細胞膜に局在していた。その機能を解明するために、過剰発現体を作製すると共に、レトロトランスポゾン(Tos17)の挿入による機能破壊株(Ostpc1)を単離した。
 Ca2+取り込み能が低下している出芽酵母のcch1変異株にOsTPC1 cDNAを導入したところ、生育と45Ca2+取り込み能が共に相補された。また培養細胞の増殖に対するCa2+感受性は、過剰発現株では増大し、Ostpc1では低下していたことから、OsTPC1はCa2+透過性のイオンチャネルとして機能する可能性が考えられる。
 通常生育下における植物体の表現型を観察したところ、過剰発現体では、発現量に応じて生育遅延・矮化・枯死等の変化が見られた。また培養細胞にタンパク質性エリシターを処理して、過敏感細胞死を伴う防御応答を誘導したところ、過剰発現体ではエリシターに対する感受性が高まり、特定の分子種のMAPキナーゼの活性化や一連の防御応答が亢進された。Ostpc1では逆に防御応答が抑制され、エリシターにより細胞死は殆ど誘導されなかったが、Ostpc1に野生型のOsTPC1遺伝子を導入したところ、エリシター応答性は回復した。こうした結果は、OsTPC1が、感染防御応答や成長制御などの広範なシグナル伝達過程に関与していることを示唆している。