第23回(2004年度)

@植物生理学会(東京)

病傷害ストレス応答におけるカルモジュリンを介した情報伝達機構の解析

加藤 新平
(農業生物資源研究所・生理機能研究グループ)

 我々はTMVに対する抵抗性遺伝子Nをもつタバコを用いて、抵抗反応へと至る情報伝達について研究を行っている。カルモジュリン (CaM) は真核生物に普遍的なCa2+結合タンパク質であり、Ca2+依存的に標的タンパク質を活性化し幅広い細胞応答を調節する。TMV感染に応答しCaMの遺伝子発現が誘導されることからCaMに着目し、タバコより13のCaM遺伝子 (NtCaM1~13) をクローニングした。これらのCaMは3タイプに大別され、異なった発現パターンおよび標的タンパク質に対する親和性を示した。 CaMを介した病傷害情報伝達機構を明らかにするため、CaM結合タンパク質をスクリーニングしMitogen-activated protein kinase (MAPK) 脱リン酸化酵素 (NtMKP1) を新規なCaM結合タンパク質として同定した。MAPKはMAPKカスケードと呼ばれる情報伝達経路を構成し、細胞外の刺激を細胞内の応答へと伝達する真核生物に普遍的かつ重要な情報伝達因子である。各タイプの代表としてNtCaM1、3および13を用い、大腸菌を用いて作製したNtMKP1の組換えタンパク質に対する結合実験を行ったところ、NtMKP1はNtCaM1と3に強く、13に弱く結合した。種々の欠失クローンおよびアミノ酸置換クローンを用いた解析より、CaMとの結合にはNtMKP1の436から453番目のアミノ酸配列からなるBaaモチーフが必須であることが明らかとなった。 傷害を受けたタバコにおいてはWIPKとSIPKという二つのMAPKが10分以内に活性化される。NtMKP1を過剰発現する形質転換タバコを作製し、NtMKP1の過剰発現がMAPKの活性におよぼす影響を調べた。その結果、NtMKP1の過剰発現体においてSIPKおよびWIPKの活性化の阻害が認められ、NtMKP1が実際にMAPK脱リン酸化酵素として機能することが明らかになった。

シロイヌナズナ花茎の形態に異常を示す fiz 変異体の解析

加藤 壮英
(奈良先端科学技術大学院大学・バイオサイエンス研究科)

 植物は、芽生え以降、その生活環のなかで常に体を作り続けていく。そして、周りの環境の変化に適するように、その体づくりを柔軟に変化させる事ができる。基本的な発生プログラムに加え、植物では環境からの影響を敏感に感受し、それらプログラムを制御し、最適な応答を示すメカニズムが備わっているものと考えられる。シロイヌナズナは、ロゼット植物であり、生殖生長期になると花茎は急速に、かつまっすぐ伸長する。これは、茎頂における急速な細胞分裂、それに続く細胞の分化、伸長の結果であり、さらにそれらが光や重力などの環境因子により正確に制御された結果であると考えられる。そこで、花茎の形態・伸長様式に異常を示す変異体を用い、器官の伸長を制御する分子機構に迫ろうと考えた。我々は、花茎が縮れたようになり、側枝がカールしたりするfiz1 (frizzy shoot1)、fiz2変異体を単離した。両変異体は多面的な表現型を示した。fiz1では、花茎、黄化胚軸そして根が野生型よりも半優性に短くなった。一方、fiz2については、地上部の表現型は劣性、根・胚軸については半優性を示した。各器官の表皮細胞が短くなっており、細胞伸長に影響があると考えられた。また、根毛伸長にも影響が現れた。fiz1変異体の花茎の重力屈性反応を調べた所、屈曲は野生型と変わらず始まったが、その反応過程に緩慢さがみられた。fiz1はACT8、fiz2はACT2をそれぞれコードし、共にミスセンス変異をもっていた。ACT8、ACT2は栄養生長期に強く発現するアクチンとして報告されている。fiz1において、抗体染色法によりアクチン繊維は確認できた。アクチン繊維は細胞内の様々な機能に関与しており、fiz優性変異アクチン分子は、その一部の機能に負の効果を与えているものと考えられる。現在、GFP-talinをもちいて、変異体におけるアクチン分子の動的な様子を解析している。また、幾つかのオルガネラマーカーを用いて、それらの動態に変化が無いかも解析中である。(図は、重力屈性変異体sgr2fiz1へテロ接合体を持つ植物。花茎の縮れが強調され、側枝は激しくカールする。)