「ウィークエンド」の「エンド」は「端」か?

平塚 徹京都産業大学 外国語学部

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 Wikipedia の「週末」の記事を読んでいると、 こんなことが書いてありました。(現在は、この部分は削除されています)

英語のWeek Endを日本語に訳したとき、週末という誤訳がされたため、 日曜日を週の最後の日とする誤用があるが、 Week EndのEndはブックエンド(本立て)のEndと同じで、 「端」を表す意味で、「終」を表す意味ではない。 日曜日を週の始端、土曜日を週の終端とする意味で考えると、 Week Endは、土曜日と日曜日に挟まれた「本立て(区切り)」と考えられる。 (2008年12月23日 (火) 14:37時点における版

 もっともらしい説明なのですが、ちょっと疑問です。 一週間について別にエッセー (「一週間はいつ始まるか?」) を書いている私としては、 この問題についても見解を書かないわけにはいきません。

 確かに、end には、「終わり」という意味だけでなく、「端」の意味があるのは事実です。 しかし、両方の意味が無差別に出てくるわけではないでしょう。 例えば、『ジーニアス英和辞典』で end を引いてみましょう。 すると、「終わり」については、

(時間・行為などの)終わり、最後、末期

という説明になっているのに対して、「端」については、

(細長い物の)端、先端(tip); (広がりを持つものの)末端部、突きあたり; (中心からはずれた)周辺地域

となっています。weekend の end はどちらの意味かと言われれば、 week、つまり「週」という期間の end なのですから、「終わり」という意味でしょう。 比較のために他の表現を考えると、year end は「年末」です。 また、the end of the week は「週末」だし、the end of the year は「年末」です。 weekend の時だけ、「端」になると考えるのは、不自然です。

 また、「端」の意味は、例えば、棒やトンネルの場合には適用されますが、 期間については言わないのではないかと思われます。 weekend の時だけ、この意味を適用するのは、アドホックです。

 週の始めだったはず日曜日が weekend になってしまった経緯については、 「一週間はいつ始まるか?」 をご覧下さい。


©平塚徹(京都産業大学 外国語学部)

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