着るコンピュータ

平塚 徹京都産業大学 外国語学部

京都産業大学外国語学部では、英語ドイツ語フランス語スペイン語イタリア語ロシア語中国語韓国語インドネシア語を専門的に学ぶことができます。


 コンピュータも据え置き型からポータブルへと小型化・軽量化が進んでいますが、これからは更にウェアラブル・コンピュータ(wearable computer)というものがどんどん出てくるだろうと言われています。これは、日本語で、「着るコンピュータ」とも言われているのですが、この「着る」という部分が非常に気になります。英語の wear を「着る」と訳しているのですが、これが問題です。

 そもそも、ウェアラブル・コンピュータというのは何かというと、衣服・腕時計・眼鏡のように身につけて(wear)利用するコンピュータのことです。問題は、英語の wear と日本語の「着る」の意味範囲の違いです。英語の wear は、「身につけている」という意味ですから、衣服にも、腕時計にも、眼鏡にも使います。ですから、腕時計型のコンピュータも眼鏡型のコンピュータも、ウェアラブル・コンピュータと言えるわけです。しかし、日本語では、腕時計や眼鏡を「着る」とか「着ている」とは言いません。ですから、腕時計型や眼鏡型のコンピュータを「着るコンピュータ」というのもおかしな話です。

 ウェアラブル・コンピュータを「着るコンピュータ」としたのは、誤訳と言っても過言ではないでしょう。だったらどういう言い方なら良かったかと聞かれると、これもなかなか難しい問題です。「身につけるコンピュータ」は正確かも知れませんが、少し長いのが難点です。他に何か良い言い方は無いのでしょうか。


©平塚徹(京都産業大学 外国語学部)

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