着るコンピュータ

平塚 徹(京都産業大学)


 コンピュータも据え置き型からポータブルへと小型化・軽量化が進んでいますが、これからは更にウェアラブル・コンピュータ(wearable computer)というものがどんどん出てくるだろうと言われています。これは、日本語で、「着るコンピュータ」とも言われているのですが、この「着る」という部分が非常に気になります。英語の wear を「着る」と訳しているのですが、これが問題です。

 そもそも、ウェアラブル・コンピュータというのは何かというと、衣服・腕時計・眼鏡のように身につけて(wear)利用するコンピュータのことです。問題は、英語の wear と日本語の「着る」の意味範囲の違いです。英語の wear は、「身につけている」という意味ですから、衣服にも、腕時計にも、眼鏡にも使います。ですから、腕時計型のコンピュータも眼鏡型のコンピュータも、ウェアラブル・コンピュータと言えるわけです。しかし、日本語では、腕時計や眼鏡を「着る」とか「着ている」とは言いません。ですから、腕時計型や眼鏡型のコンピュータを「着るコンピュータ」というのもおかしな話です。

 ウェアラブル・コンピュータを「着るコンピュータ」としたのは、誤訳と言っても過言ではないでしょう。だったらどういう言い方なら良かったかと聞かれると、これもなかなか難しい問題です。「身につけるコンピュータ」は正確かも知れませんが、少し長いのが難点です。他に何か良い言い方は無いのでしょうか。