京都産業大学外国語学部では、英語・ドイツ語・フランス語・スペイン語・イタリア語・ロシア語・中国語・韓国語・インドネシア語を専門的に学ぶことができます。
2023年7月11日付の朝日新聞に載ったフランスでの暴動での記事にハイチ系の少年の言葉が引用されていた。
「最初は抗議を支持していたのに、警察が動き出したら、みんなが郊外に住む人をバカにし始めた。あれがフランスの本当の顔だ」「フランスの本当の顔」とは、なかなか凝った言い回しをすると思われるかもしれない。しかし、これはフランス語のle vrai visage de la Franceを直訳したものだろうと思われる。visageは「顔」という意味だが、「姿」や「様相」という意味もある。『小学館ロベール仏和大辞典』は、le vrai visage des Etats-Unisという用例を挙げて「アメリカの真の姿」という訳を付けている。そうすると、le vrai visage de la Franceは「フランスの真の姿」と訳せるし、そのような普通の感じの言葉だろう。そもそも、le vrai visage de 〜 と言う言い回しは1920年頃から使われている表現であり、le vrai visage de la Franceも同じ頃から使われて定着した表現である。日本語訳の「フランスの本当の顔」から受ける修辞的な感じはない。
このle vrai visage de la Franceは、2024年8月12日にフランス大統領のエマニュエル・マクロンもパリオリンピックの成功について語った時に使った。インターネット上の日本語の記事では、「フランスの真の顔」とカッコ付きで引用されている。フランス大統領らしい詩的な表現と感じた人もいるかもしれないが、よく使われる言い方をしたに過ぎない。
©平塚徹(京都産業大学 外国語学部)
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