ウクライナ語の色名

平塚 徹京都産業大学 外国語学部

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 ウクライナ語はロシア語によく似ています。しかし、歴史的にポーランド語からの影響も強く受けています。ここでは、このことを色名で見てみます。以下は、ウクライナ語とロシア語の色の形容詞を対照した表です。無彩色と虹の色を挙げています。

ウクライナ語とロシア語の色名
ウクライナ語ロシア語
白いбілий (bílyj)белый (bélyj)
黒いчорний (čórnyj)чёрный (čórnyj)
灰色のсірий (síryj)серый (séryj)
赤いчервоний (červónyj)красный (krásnyj)
橙色のоранжевий (oránževyj)
помаранчевий (pomaránčevyj);
оранжевый (oránževyj)
黄色いжовтий (žóvtyj)жёлтый (žóltyj)
緑のзелений (zelényj)зелёный (zeljónyj)
明るい青のблакитний (blakýtnyj)
голубий (holubýj)
голубой (golubój)
暗い青のсиній (sýnij)синий (sínij)
紫のфіолетовий (fiolétovyj)фиолетовый (fiolétovyj)

 ロシア語は「青」を二つに分けることが知られています。この二つの語は、一方が青全体を表し、他方がその一部分を表すのではありません。「明るい青」と「暗い青」というお互いに別の色と捉えられているのです。訳語としては明るい方を「空色」や「水色」、暗い方を「紺色」や「藍色」と訳すこともできます。同じ区別はウクライナ語とベラルーシ語にもあります。この点で、ウクライナ語はロシア語に似ていると言えます。

 さて、両者を単語毎に比較すると、よく似ている単語が多いものの、似ていない単語もあることが分かります。以下に該当する色を抜き出し、ウクライナ語がロシア語と似ていない部分に色をつけます。

色名が似ていないところ
ウクライナ語ロシア語
赤いчервоний (červónyj)красный (krásnyj)
橙色のоранжевий (oránževyj)
помаранчевий (pomaránčevyj)
оранжевый (oránževyj)
明るい青のблакитний (blakýtnyj)
голубий (holubýj)
голубой (golubój)

 「赤」は異なる語に入れ替わっていて、「橙色」と「明るい青」はロシア語と似た語の他に別の語があります。このロシア語には対応しない語は、全てポーランド語からの借用語です。

 ウクライナ語の色名は、全体としてはロシア語と似ているのですが、個々の単語で見るとポーランド語から借用が見られます。このように、ウクライナ語は系統的に近いロシア語に似ているのですが、歴史的にはポーランド語の影響を受けて来たのです。



©平塚徹(京都産業大学 外国語学部)

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