他動詞の大好きな英語とそれほどでもないフランス語

平塚 徹京都産業大学 外国語学部

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 フランス語には、英語と比べて、日本人学習者にとって、 学習しやすいところが色々とありますが、 そのうちの一つを紹介しましょう。

 英語でよく間違えやすいと言われているものに、 自動詞と他動詞の区別があります。 例えば、「彼女は母親に似ている」は、(1)のように言うのは誤りで、 (2)のように言わなければなりません。

(1) × She resembles to her mother.
(2) ○ She resembles _ her mother.

 文法的に言うと、動詞resembleは、自動詞ではなくて、他動詞なのです。 しかし、日本語での言い方に引っぱられて、 ついつい、toを入れてしまうのです。

 ところが、フランス語だと、同じ意味の動詞ressemblerは、 他動詞ではなくて、自動詞なのです。 しかも、日本語の「〜に」に対応する前置詞àを入れます。

(3) ○ Elle ressemble à sa mère.
(4) × Elle ressemble _ sa mère.

 つまり、日本人学習者にとっては、英語の時のような問題は起きないのです。 これは、「似ている」という動詞だけの話ではありません。 日本人学習がよく間違えると言われている英語の他の動詞でも、同じことがかなり成り立っています。

英語フランス語意味
to obey ...obéir à ......に従う
to answer ...répondre à ......に答える
to attend ...assister à ......に出席する
to enter ...entrer { dans / à} ......に入る
to discuss ...discuter { de / sur } ......について議論する
to divorce ...divorcer avec ......と離婚する

 英語の言い方とフランス語の言い方を比べると、 フランス語の方が日本語話者には分かりやすい言い方をしています。

 他にも、一般的にはあまり問題にされていないものも、取り上げておきましょう。

 「...に電話する」という場合、英語ではto telephone to ...よりも、to telephone ...という言い方の方が普通ですが、 フランスでは、téléphoner à ...です。

 また、「...に手紙を書く」という場合、アメリカ英語ではto write ...ですが、 フランス語ではécrire à ...です (ただし、イギリス英語ではto write to ...が普通)。

 日本語話者にとっては思わぬところで、英語では他動詞を使います。 つまり、英語は「他動詞がとても大好きな言語」なのです。 しかし、フランス語は英語ほどには他動詞が好きな言葉ではありません。 この点では、フランス語は、日本人にとって、英語よりも簡単なのです。



©平塚徹(京都産業大学 外国語学部)

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