京都産業大学外国語学部では、英語・ドイツ語・フランス語・スペイン語・イタリア語・ロシア語・中国語・韓国語・インドネシア語を専門的に学ぶことができます。
フランス語で2時10分と言う場合、普通はdeux heures dixと言って、deux heures dix minutesやdeux heures et dixは普通ではありません。他方で、2時半という場合には、deux heures et demiのようにetを加えます。なぜ、このようになっているのでしょうか。
2時10分の場合例えば、時刻以外で似たような場合を見て見ましょう。
これらの表現では、基本となる単位の後に補助単位が続くのですが、etを入れず、補助単位のcentimes(セント)やcentimètres(センチメートル)も省略されるのが普通です。2時10分を表すdeux heures dixも、このパターンに従ってetを入れずにminutes(分)が省略されているのです。つまり、これは時刻特有の言い方なのではなく、フランス語の通則に従っているだけです。
数詞 | 単位 | 数詞 | 補助単位 | |
---|---|---|---|---|
金額 | deux | euros | dix | (centimes) |
長さ | deux | mètres | dix | (centimètres) |
時刻 | deux | heures | dix | (minutes) |
これも、「〜半」を表現する他の場合を見て見ましょう。
時刻以外でも、「〜時半」と言う場合には、et demi(e)を使います。つまり、etを伴うのは、「〜半」の一般的な言い方に則っているだけです。
数詞 | 単位 | et | demi(e) | |
---|---|---|---|---|
期間 | deux | ans | et | demi |
重さ | deux | kilos | et | demi |
時刻 | deux | heures | et | demie |
一方で、「〜時15分」を表す場合はet quartが用いられます。しかし、かつては、et un quartと言っていました。そもそも分数表現では分母に対する分子が必要で、例えば以下のように言います。
よって、「4分の1」もun quartになります。さらに「2か4分の1」のような帯分数を言う場合にはdeux et un quartのようにetも使います。よって、「〜時15分」と言う場合には、et un quartということになります。しかし、現在ではet quartというのが普通になっています。これは、おそらく、et demieの影響でしょう。時刻表現では、さまざまな分数が出てくることはないので、分数一般の言い方から離れて、et demieのパターンに合わせたのでしょう。
deux et un quart(2¼) | deux heures et demie(2時半) | |
deux heures et un quart | → | deux heures et quart |
「〜時15分前」を表す moins le quartも、元々は moins un quartと言っていました。上述の通り、「4分の1」はun quartですので、これは当然です。しかし、unがleに変わっていきました。この15分は3時になる直前の最後の15分という特定の15分だという意識が働いたのでしょう。
時代や地域によって違うフランス語圏でも、地域によって時間の言い方は異なります。例えば、ベルギーではフランスとは異なる時刻の言い方があります。
これらの言い方は、おそらく、deux heures dix(2時10分)やtrois heures moins dix(3時10分前)などの言い方をもとにして、分を表す数詞の部分をquartに入れ替えてできたのでしょう。このように、時刻の言い方は、時代によって変化してきたし、地域などによっても異なっています。
まとめフランス語の時間表現は、一見すると複雑ですが、フランス語の数量表現の一般的な原則に基づきつつ、類推などによって変化してできたものとして理解できます。しかし、時刻表現は地域によって異なることから、現代フランスの標準的な言い方は必ずしも必然的にそうなった訳ではなく、他の言い方もあり得たと考えられます。
©平塚徹(京都産業大学 外国語学部)
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