cinq、six、sept、huit、neuf、dixの最後の子音字を読むのはなぜか?

平塚 徹(京都産業大学)


 フランス語の初級教材では、綴り字の読み方の原則をやった直後に数詞が出てくるものがある。そうすると、「単語の最後の子音字は読まないよ」などと言った舌の根も乾かないうちに、cinq、six、sept、huit、neuf、dixと立て続けに単語の最後の子音字を発音することになる。fは単語の最後でも読むのが原則だと言い訳できるが、xやtはそうはいかない。規則を出しておきながら、早速、例外が連続して出てきて、しょっぱなからフランス語の印象が悪くなるのである。

 こんなことになるのは、数というのは、とりわけ区別が重要なので、違いがはっきりするように言おうとする力が働くからだと思われる。例えば、日本語の数は、音読みでは、「いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう、じゅう」だが、「し」の代わりに「よん」、「しち」の代わりに「なな」と言ったりする。これは、その方が他の数と区別しやすいからだ。

 フランス語では、かつて発音されていた単語の最後の子音が脱落していったのだが、綴り字は保守的なので、その結果、単語の最後に読まない子音字が残るということになった。しかし、数には明瞭に言おうとする力が働くので、それが最後の子音の脱落を妨げる要因になったものと思われる。

 なお、cinq、six、huit、dixは、子音や有音のhの前では最後の子音字を読まない。こちらの方は、ちゃんと脱落したわけだ。数を区別しやすいように明瞭に言おうとする力は、名詞と組み合わせて言う場合よりも単独で言う場合に強く働くようだ。数を強調して言うのは、単独で言う場合ということだろう。それでも、cinqは、centと紛らわしいのか、実際には、子音や有音のhの前でも結構qを発音している。