謎の英単語fay

平塚 徹京都産業大学 外国語学部

京都産業大学外国語学部では、英語ドイツ語フランス語スペイン語イタリア語ロシア語中国語韓国語インドネシア語を専門的に学ぶことができます。


 「グーグル・Nグラム・ビューワー」で、fayという単語の使用頻度の推移を見ると、16世紀の終わり頃から出現して、19世紀初頭にほとんど消えてしまう。

辞書にはfayという語が幾つか掲載されているが、これはほとんどそのいずれでもない。

 実は、このfayの消失は、sayの出現頻度が増加するのと入れ替わりに起きている。

種明かしをすると、こういうことだ。

 s は、かつて、語末以外では ſ という字形が用いられていた。これを「長いs」と呼ぶ。長いsは、OCRでしばしば誤って f と認識されてしまう。そのため、sayがfayとなっている場合がよくあるのである。そして、長いsが用いられなくなると、急にfayが消えて、入れ替わりにsayが増加するのである。


©平塚徹(京都産業大学 外国語学部)

京都産業大学外国語学部では、英語ドイツ語フランス語スペイン語イタリア語ロシア語中国語韓国語インドネシア語を専門的に学ぶことができます。