X do not a Y make

平塚 徹京都産業大学 外国語学部

京都産業大学外国語学部では、英語ドイツ語フランス語スペイン語イタリア語ロシア語中国語韓国語インドネシア語を専門的に学ぶことができます。


 ≪X do not a Y make≫という特異な語順の文が存在しています。例えば、次のようなものです。

 これは、Richard Lovelace (1618−1657) の To Althea, from Prison (1642) という詩の Stone walls do not a prison makeという一節の模倣だと考えられます。

Stone walls do not a prison make,
Nor iron bars a cage;
Minds innocent and quiet take
That for an hermitage

ここでは、2行後のtakeと押韻させるために、makeが文末に来ているために、 現代英語から見ると特異な語順になっています。 この詩句が人口に膾炙しているために、同じパターンの様々な文を生み出す元になっているようです。

 ≪X do not a Y make≫というパターンのことわざにも、これに合わせられたバージョンが存在します。

このうち、一つ目には、One swallow doth not a summer make. のように、 doesの代わりにdothを用いて、 特異な語順のもたらす古風な感じを更に強めるバージョンも見られます。

 学術論文のタイトルにも、このパターンは用いられています。

 人口に膾炙しているStone walls do not a prison make の古風な語順と格言的な内容が、 「XだけではYにはならない」という観念が生じたときに、しばしば、 それを≪X do not a Y make≫というパターンで表すというパロディーを生み出しているのです。


©平塚徹(京都産業大学 外国語学部)

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