ルルーシュ、ナナリー、シャルル、、、

平塚 徹京都産業大学 外国語学部

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ルルーシュ

 『コードギアス 叛逆のルルーシュ』の主人公の名前ルルーシュLelouchは、本来、フランス人の姓で、特に映画監督クロード・ルルーシュの名前でよく知られている。アニメなどのクリエーターなら、いろいろな映画を見ていると思われるので、これはクロード・ルルーシュへのオマージュだろう。父親の名前がシャルルなので、それをひっくり返したような感じにすると言う意図もあったろう。ただ、ルルーシュは姓であって、ファーストネームではない。しかし、英語圏では姓をファーストネームとしてつけることが見られる。母親の旧姓や先祖の姓をつけたり、ありきたりではないが馴染みやすい名前を追求したりといった動機があるようだ。TaylorやJacksonのようにファーストネームとして定着した名前もある。しかし、フランスにおいてルルーシュLelouchがファーストネームとして用いられた例は見当たらない。

ナナリー

 ナナリーNunnallyも姓である。しかし、この名前をファーストネームとして用いた実例がある。映画監督ナナリー・ジョンソンである。おそらく、ここから取った名前だろう。ルルーシュは「ルル」という同音反復から始まり長音を含むが、ナナリーは「ナナ」と言う同音反復から始まり長音を含むので、音形のパターンが類似している、しかも映画監督の名前である。ナナリー・ジョンソンは男性なので、女性につけても良いかと思う人もいるかも知れない。しかし、ファーストネームとしての使用例が稀なので、男性名だとも言えない。

シャルル

 シャルルCharlesは、フランス語の伝統的なファーストネーム。英語名のチャールズに相当する。神聖ブリタニア帝国はイングランド王国の流れを汲んでいるし、公用語も英語なのだが、皇族たちの名前は英語名というわけではない。上述の通り、音形がルルーシュと対応することも意図された命名だろう。フランス王の名前でもシャルルはよく使われたので、皇帝の名前としても馴染みやすい。

クロヴィス

 世界史でクロヴィスClovisと言えば、メロヴィング朝フランク王国の初代国王。ただし、「クローヴィス」と表記されていることが多い。

ロロ

 世界史でロロRolloと言えば、ノルマンディー公となってノルマンディー公国の礎を築いた人物。ルルーシュの愛称「ルル」と同じく、ラ行音の反復になっている名前をつけたのだろう。英語では、歴史上の人物のロロはRolloと綴るが、『コードギアス』のロロはRoloと綴られていることもある。

ランべルージュ

 ランべルージュLamperougeは、フランス語のlampe(ランプ)とrouge(赤い)で、「赤いランプ」と言う意味になる。ただし、フランス語の発音では「ランプルージュ」になる。しかし、このような姓はおそらく実在しない。

ヴィ、ジ、ラ、リ、エル、ウ、、、

 ブリタニア皇族の名前にはルルーシュ・ヴィ・ブリタニアLelouch vi Britanniaのヴィviのような小辞がつく。これは、貴族の小辞nobiliary particleをイメージしたものと思われる。本来、これは「どこそこの」と言うように所領や出自を表すためのもので、フランス語ならde、ドイツ語ならvonと言語によって決まっている。しかし、ブリタニア皇族の名前に出てくる小辞には、そのような機能はない。色々な小辞が出てくるのだが、母親とその子供達は同じ小辞を持っているようだ。ルルーシュとナナリーは母親のマリアンヌと同じくヴィ・ブリタニアだし、コーネリアとユーフェミアの姉妹は共にリ・ブリタニアである。どうやら、皇妃はそれぞれ名前に小辞を持っていて、それを子供に継承しているらしい。ブリタニア皇族において女系を示す記号のようだ。ルルーシュとナナリーの母親のマリアンヌは庶民出身だが、そのことは彼らが皇族であっても「ヴィ」と言う小辞に刻印されたまま残るのである。



©平塚徹(京都産業大学 外国語学部)

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