入れ子構造を用いた自己言及的なメタ・フィクション。主人公のもとにマンガの原画が次々と送られてくるが、それはまさしくこの作品自体の原画であり、主人公の過去・現在・未来が描かれている。彼はしだいにその意味を追求し始める。
アクファック氏は、無理やり逮捕され、狂言裁判で「駅」へ行く刑に処せられる。果たしてそこで彼を待っているものとは?本作も写真を使うなどの実験的手法を試みている。BDには珍しくモノクロ作品しか描かないマチューが自分の作風を逆手に取ったメタフィクション。
アクファック氏が、朝、出かけようとすると、もう一人の自分が現れて、出かけるなと言う。呼び出しを受けている彼はそれを振り切って出かける。呼び出された場所に着くと、病人として無理矢理治療されてしまう。気がつくと、部屋の中にいるが天井が無い。壁の上に登ると、同じような部屋が地平線の果てまで続いている。さまようアクファック氏は、二次元のマンガ世界から外の三次元世界に抜け出てしまう。なんとかマンガの中に戻るが、そこで作品冒頭に出てきたもう一人の自分の謎が解ける。
前半:Le Début de la fin(終わりの始まり)アクファック氏が目覚めると、服を着たままだった。洗面所に向かうと、後ろ向きに歩いているし、ひげを剃ると、逆にひげ面に戻っている。することが何でも逆なってしまう。治療を受けると体を裏返しにされるが、やはり、調子がおかしい。そして、ついには、鏡の向こうへと抜けていく。
後半:La Fin du début(始まりの終わり)このマンガ『終わりの初め』は、最後のページから読むと『初めの終わり』というマンガになっている。アクファック氏が目覚めると、何かがおかしい。部屋も逆さまだし、人々の行動も逆さまである。今度は、アクファック氏ではなく、世界の方が逆さまになっているのである。
アクファック氏は、消失点が1つ失われる夢を見る。目が覚めて職場へ向かうが、途中で拘束されてしまう。そして、通常は2つある消失点が、1つなくなって遠近法が機能しなくなり、厚みが失われているとの説明を受ける。失われた消失点を取り戻す使命を無理矢理負わされたアクファック氏は、紙飛行機にされて飛ばされるが、飛行計画書を落としてしまう。マンガの外の世界をさまよいながら飛行を続け、渦に吸い込まれて立体の世界に入る。
表紙からいきなり7ページで、アクファック氏はベットに乗って飛んでいる。行く手にマンガのページが現れて、その中へ飛び込む。いつもの部屋で眼が覚めるが、彼の姿は見えず、声も他人に聞こえない。主人公がいなくなったと思った脇役たちは、ストーリから取り残されたのではないかと疑い、さまよい続ける。アクファック氏もそれについていく。ページが3枚破られて、ストーリに追いつくと、灰色のアクファック氏が現れるが、しゃべっても吹き出しは空っぽである。透明のアクファック氏は、この灰色のアクファック氏に合体する。すると、話すことができる白黒のアクファック氏に戻る。主人公と脇役たちは歩き続けていくが、本が終わっていないにもかかわらず、裏表紙が出てくる。