企業の設立と資金調達:前半(8期ゼミ生)(2017年10月19日)

8期生の吉田です。三章前半を芳末くんが発表してくれました。
企業の諸形態は財務会計の対象となる企業は6つに分類する事が出来ます。
個人企業・組合企業・合名会社・合資会社・合同会社・株式会社という種類があり企業設立の際はこの内のどれかを選択します。
世界的に有名な巨大企業もその大部分は1人の事業主らが自己出資し、自ら経営を行う個人企業として開始されます。
しかし、個人が出資できる金額には自ずから限界があります。
それを克服するために組合企業という中小企業の経営者が資本と労働を企業相互間で出し合って協同で大規模事業を行う形態をとる事があります。しかし、組合企業の取引は構成員全員の名前を示して行うと共に、財産の所有についても、全員の共同名義で登記しなければならない、これらが更に拡大化するとなると手続きは非常に煩雑になる。
これを避けて企業名で活動を遂行できるようにするには、会社という法人格を取得する必要がある。
会社の4種類である合名会社・合資会社・合同会社・株式会社には出資者の責任という有限責任・無限責任というものがあります。
これは会社が倒産した場合に会社が銀行や取引先などに対して負っている債務について出資者が負担しなければならない責任の事で、有限責任の場合出資者は自分が会社に出資したお金を放棄するのみで、個人財産を投げうってまで会社の債務を返済すべき義務を負わない権利のことです。
これに対して、無限責任の場合、出資者は個人財産をすべて出して、会社の債務を返済しなければならないのです。
有限責任は合資会社の一部、合同会社、株式会社に存在します。無限責任は合名会社、合資会社の一部に存在します。
したがって、有限責任を持つ会社は出資者に安心して出資をしてもらえるために、出資者からの資金調達に関して有利な企業形態といえます。
・株式会社の設立
企業が設立される時、会社設立時の法的手続きは必要としません。これに対して会社は設立時に定款と言う会社名や会社の目的などの会社の情報が記載された書面を作り、設立登記を行うことによってその定款が、権利・義務の主体となります。つまりこの定款があって初めて会社は経済活動をすることができます。
株式会社の設立には、上記に述べた定款の作成以外に、更なる追加項目が2つ必要となります。
1つ目は定款を法務局又は公証人役場へ持って行きその記載内容を公証人に認証してもらうことです。
2つ目は金融機関の所定の口座へ出資者からの払い込みを受け、出資払込金補完証明書を受け取ることです。公証人からの認証済み定款、出資払込金保管証明書又は残高証明書は会社の設立時に必要不可欠な添付書類です。
出資者が有限責任を負いステークホルダーの数も多い株式会社はこれらの複雑で厳密な手続きが必要となりますがその分。メリットも多いです。
・株式会社設立時の株式発行
まず、授権資本制度について、公開会社において定款所定内の発行可能株式総数の限度内であれば株主総会の決議なしで新株の発行を可能にし発行済み株式の、4倍まで増資することのできる制度です。まず公開会社とは株式の中に譲渡制限が付けられていない株式のある会社です。
つまり、譲渡制限のない株式が発行されるため、株式の流動性が高いです。流動性が高い結果多くの株主が存在すると考えられます。
前述した、新株発行は会社にとって大きな影響を及ぼすため、本来会社の所有者たる株主の意思決定が必要となります。ところが、公開会社の株式流動性は高く、資金調達の都度株主総会を招集し意思決定を行なっていては経営者が思うような資金調達が出来ません。
日々刻々と変動する株式市場をタイムリーに資金調達するためには株主総会での意思決定ではなく、取締役会の決議のみで意思決定する事が求められます。つまり、タイムリーに資金調達をすることができます。
発行株式が少なくなれば新株発行により、発行可能株式総数の枠を上げる事が出来ます。
これが授権資本制度です。
かつての株式は券面上に額面金額が印刷されているか否かで額面株式・無額面株式に分類されていました。
その発行価額はいずれも50,000円以上が原則でしたが、これらの制度は資金調達の妨げになる可能性があったため2001年10月以降廃止されました。
・株主会社の資本金
会社が発行する株式に対し、株主が会社に払い込んだ金額はその全額を資本金とするのが原則です。しかし、発行価額の2分の1まで資本金としない事が会社法によって認められています。
会社法は現金配当など会社の財産の社外流出を伴う分配を行う都利益の一部分を利益準備金として積み立てます。資本準備金と、利益準備金の合計額が資本金の4分の1に達するまで積み立てなければいけません。このため資本金が多い程、分配可能利益も多くなります。
これらの拘束額を和らげる目的で取り入れられたのが会社法上の最低限度額しか資本金に取り入れない最低資本金制度です。
株式会社設立は1000万、有限会社設立は300万円の資本金を用意する事を求めた制度であったが、会社法変更によって1円からでも、会社設立ができるようなりました。それから起業はとても容易となり、様々な会社が設立し易くなりました。資本金に組み入れない部分は株式払込剰余金という、資本準備金の一項目として積み立てなければいけません。
・創立費と開業費
会社を成立させるには種々の支出が必要です。定款作成費・銀行手数料など会社が負担する設立費用などがあり、これらを負担しなければ会社は法的に成立せず、収益を獲得することも出来ないため、その支出効果は会社の、存続期間の全体に及びます。
したがって、これらの支出額を一旦創立費という資産で繰り延べた上で徐々にそれを取り崩し費用計上するのが合理的です。
そして、会社は法的に成立した後にも営業を開始するまでに開業準備のために支出が、多くあります。建物賃借料・広告宣伝費・水道光熱費などがあります。このような支出もまた創立費同様、開業費として資産計上します。これらは、貸借対照表の資産の部の最後に繰延資産の区分を設けここに記載します。
しかし、これらの項目は換金価値を有しない為、債権者保護の観点から支出の時点で営業外の費用として会計処理するのが原則とされています。また収益との対応関係も重視し資産計上した場合も早期に取り崩すのが望ましいです。
創立費については会社設立後5年以内
開業費については営業開始後5年以内に規則的な方法で償却を行う事が求められます。これらの償却費は営業外費用として計上されます。