Crossroads Forum アーカイブ


2016−01−22
難民問題へのアプローチJust Across the Borderline

ヨーロッパ言語学科フランス語専攻・国際関係学科 共催 )

20161月のCrossroads Forumは、アジア・中東・アフリカからヨーローパに流れ込んでゆく難民たちの現実がどういうものか、映画(DVD)や新聞・雑誌記事を参考にして考えてゆきたいと思います。

【日時】 1月22日(金)4時45分〜

【場所】 3号館 302教室

【プログラム】 Michael Winterbottom監督の映画“In This World”を観る。関連する記事などを配布して、ディスカッション。

In This World”について

 アフガニスタン人の少年、ジャマールは戦争のためにパキスタンの難民キャンプに家族と住み、レンガを焼く工場で将来の見通しのない仕事をしていた。いとこのエナヤットの父親が息子の将来を案じて密入国業者に大金を払い、エナヤットを親戚のいるロンドンに向かわせようとしていたが、英語が少し話せるジャマールも同行することになった。そして、いよいよ彼らは自分たちの新たな未来と希望を胸に抱き、6400キロ彼方の亡命先へ死と隣り合わせの旅に出る。

 2000年、イギリスへの不法入国を試みた中国人58名がトラックのコンテナ内で死亡するという事件に衝撃を受けたマイケル・ウィンターボトム監督が、難民問題に真正面から取り組んだ社会派ドラマ。実際にパキスタンの難民キャンプで暮らす少年を主演に起用し、遥かロンドンまでの危険で過酷な旅を、事実を基づいてドキュメンタリー・タッチで描く。2003年のベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞。


コメント・感想(アンケートの結果など)

 月一回定例でCrossroads Forumをやろうとしてから第一回目の集まりで、学生さんがどれだけ来てくれるのか心配でした。結局、学生・教員で15人くらい集まり、とりあえずのスタートとしてはまあ十分ありがたいことだと思いました。映画は地味で、不法入国を試みる移民の青年たちの足取りを淡々と追ってゆくので、若い人には退屈で寝てしまうのではないかとも心配しましたが、そんなことはまったくなく、アンケートにあるように、みんなが驚きと感動とともに、映画が提起する問題をしっかりと受け止めてくれてました。一人の例外もなく・・・。地味で淡々としていても、映画の表現の質が高いから、みんなの心をとらえたのだと思います。延々と続く荒涼とした道路を走って、移民の青年たちを運ぶのが、TOYOTAのピックアップトラックやVOLVOのトレーラで、先進工業国のパワーと移民の無力さの対比のようでした。青年達のルートにある大都市―ペシャワル、テヘラン、イスタンブール、トリエステ、ロンドン―が、しだいに洗練されたこぎれいな街に変化していって、いわば「文明化」してゆくところも、その恩恵にあずかれない人々にとっては、自分が排除されている分だけ余計に冷酷で傲慢に映るだろうと思われました。難民たちを最後にはねつけるユーロトンネルのフランス側で、オレンジ色の街灯に照らされた鉄柵やコンクリートの建造物が冷たく殺伐としていて、出発点の乾燥地帯の難民キャンプと重ねあわされるような印象を受けました。フェルナンデス先生が映画の後の感想で、まず第一に「悲しいね」と言った、その通りです。(フランス語専攻・荒井文雄)

・難民は難民としての環境や将来に問題や不安があると考えられるが、今回の映画でそれまでの過程がむしろたいへんであることがあらためて認識できるたいへん良い機会になりました。途中で人々の素朴な善意が見えたのが救いでした。(国際関係学科・北澤義之)



学生のみなさんの声

参加者のアンケートから


【感想】
・今まで何度か外国に行って、途上国の様子も少し見たこともあるけれど、豊かな暮らしをしている自分にはあのような現実は想像できないと感じた。最後のパキスタンの子どもたちが笑っているシーンを見て、果たして危険を冒して亡命することの方が自国にとどまるより本当に幸せなのだろうかと思った。無事目的地へたどり着けたとしても、申請が却下されたり人々に受け入れてもらえなかったり、ことばの壁や考えの違い等あまりに障壁が大きすぎると思った。それがテロ思想へとつながったりするのだろうと思うと、これからの私たちは難民について見て見ぬふりをしていてはいけないと思った。
・日本で暮らす私たちにとっては、ありえない話だと思いました。危険を冒してまでも密入国をしなければならないという状況に、心が痛みました。難民の人々を救うために、自分ができることを何かしたいと思いました。私たち日本人は恵まれすぎていることを改めて実感し、もっとこの状況を私たちは知らなくてはならないと思います。
・すごい考えさせられる内容でした。このような現状が本当に起こっているということ、そしてもっとたくさんの人たちがこのような状態であるということがすごく悲しい。私たちの生活では全然考えられなくて、この映画題名の”IN THIS WORLE”のようにこれが今の地球・世界なんだと思いました。どうしたら難民を救えるのか、私には見当もつかないです。今度そのようなことについて調べてみたいと思いました。
・移民がそれだけ危険でたいへんなものかわかりました。移動する国ごとに移民の人たちを助けたり、普通に受け入れてくれる家族がいたシーンを見て、そういう人たちもいるんだなと思いました。最後にイギリスに入れたけど、結局イギリスからでなきゃいけないし、仕事に就くのも難しいし、まだまだ移民を受け入れる体制になっていないのでもっと移民について考える必要があると、思います。
・映画を見て衝撃を受けた。難民の逃亡生活が極めて劣悪と耳にしていたが、映像にすると伝わる内容が違った。生活をよくしたい思いから命を落とす人々、多大なお金を要求する、密入国を援助する者、家族を亡くす者、盗みを働いてでも何とかしようとする者、絶対に日本ではありえないことだが、この事実を他人事にして終わらせるのも怖い。今、難民受け入れ問題で揉めているが、日本における難民について学んでみたい。‐お金がある人が逃亡できるちゃんすがあること。‐密入国を援助ししている人たちが「現地についたらコイツに連絡しろ」などと言い、連絡先を渡すことがあるが、信用性はあるのだろうか。情報網やコミュニティー網は一体どうなっているのだろう。‐もっと多くの学生にこの授業ことを知ってほしい。‐私は世界中に友人がおり、よくfacebookに難民の写真がのせられる。それを見ていると日本のマスコミの難民問題は軽く(?)あつかわれているのはと思う。トルコに小さい男の子の子供が流されてきて死んだことはよく取り扱われていたけれども。
・私は今までアジアのいくつかの国に行かせていただき、難民キャンプでボランティアをさせていただいたことがあるのですが、その際に出あった人たちがどのようにあの状況になったのか、どうやって難民キャンプまで来たのか、その現状を全然想像できませんでした。よく、船でヨーロッパに渡る際に約7−9割の不法入国乗船者が途中で命を落とすと聞きましたが、そうまでしてヨーロッパへ行きたいと切実に環境はどのように築かれて、何故そうなったのか、とても興味があります。犯罪組織がどんな目的でどのようなつながりで成り立っているのかも気になります。
・難民の実態について知ることができた。空爆に大金を使い難民の人たちにお金が回っていない。日本の安全さが知れた。こういうことが今、起きていることが信じられない。とても他人事とは思えなくて、日本でこういうことが起きると考えるととても恐ろしい。
・世界の現状を知ることができてよかったです。日本人には考えられないようなことが難民には起こっているのかと思うと本当に悲しいし、どうにか彼らを救ってあげられないのかと思いました。多くに国でイスラム系の人々は嫌われていますが、世界の人にこの現状を知ってもらうことで難民の置かれている立場を理解してもらい、難民救済の解決策ができたら良いと思います。


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【今後取りあげてほしいテーマ】

・北朝鮮などの独裁を行っている国について学びたいと思いました。
・ISISについて、くわしく。
・今、イスラム国の問題が世界的に広がっているので、それについてもっと知りたいなと思います。
・日本の難民受け入れ問題。
・フランスや他国のシリア爆撃について。そんなことでIS問題は解決されるのか。
・難民の不法入国を手助けする人々について。
・今回難民のことについて学ぶことができてとてもよかったです。シリアの状況や国の状態などを知りたいです。ISのことを、制限がかかってあまり報道されないので、どういうことになっているのか知りたい。
・なぜ中東では内戦や戦争が頻発するのかを知りたいです。
・留学生と一緒のdiscussionがあってもよいように思います。