経済学も実験の時代?
京都産業大学
大学院に大型実験室 研究費と合わせ3億円投入
京都産業大学(新田政則学長)はこのほど、国内有数の「経済学実験室」を大学院経済学研究科に開設した。「実験経済学」と呼ばれる新しい研究手法に基づいて、経済政策立案に必要な基礎データや科学的知見を得ようというもの。国費などから総額3億円の研究費・設備費を投入することになっており、経済学の研究プロジェクトとしては従来にない予算規模になる。プロジェクトを担当する小田宗兵衛(秀典)教授は「実験経済学は、文科系・理科系という垣根を超えてさまざまな科学と結びつく可能性がある」と話している。
今回のプロジェクトは文部科学省の私立大学学術研究高度化推進事業の中に設けられた「オープン・リサーチ・センター整備事業」に基づくもの。『実験経済学:経済学教育の新しい方法と、それによる経済学教育の社会的効果の研究』と題して、パソコンネットワークをフル活用する実験設備と人員体制を整えた。
実験室には、パーティションで区切られた25ブースを設け、被験者には通信ネットワーク上でシミュレーションゲームをしてもらう。成績がいい被験者にはより多くの報酬を払うなどのルールをさまざまに設定することを通じて、理論に基づく方程式のパラメータを算出していく。
研究費(予算)は2001年度から起算して5年間で1億600万円(国家補助込み)。このほか建物設備に1億4300万円(同、うち情報機器関連が1300万円)を投入する。これは、「経済学の研究としては非常に大きな額だ」(小田教授)という。
従来の経済学研究では理論研究やアンケート調査、統計調査などが主体で、自然科学的な実験は行われていなかった。このため、政策担当者やエコノミストの主観的な判断で経済政策が決定され、その結果を客観的に評価されることも少なかった。とくに市場原理が働きにくい医療や教育などの分野に関わる経済政策が主観的に進められる原因にもなっていた。
過去10年あまりにわたって実験経済学に取り組んできた大阪大学社会経済研究所の西條辰義教授は、「炭酸ガス排出権取引など、非市場的な問題に市場原理を導入しようとする場合に、経済学実験の成果が役に立つ。この分野からは近くノーベル賞学者も出るとみられており、国内でも十分な予算を投じて実験が行われるのは喜ばしいことだ」と話している。
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