京都産業大学大学院経済学研究科
オープンリサーチセンター



研究成果等公開型プロジェクト

平成13年度事業報告

  本プロジェクトは、文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業の一つであるオープンリサーチセンター(以下ORCという)整備事業の対象として選定を受けたものである。期間は、平成13年度11月より平成17年度3月である。すでに本年度6月に同じくORC整備事業の選定を受けた「実験経済学」プロジェクトとともに、本学大学院経済学研究科の研究活動への積極的援が期待されている。

  経済グローバル化と市場経済化の潮流は国民経済のこれまでの概念・枠組に大きな変革を迫り、日本をめぐる国際経済関係もダイナミックな変革期を迎えてぃる。ORCの3つのプロジェクトは、それぞれ異質の研究活動とはいえ、その問題意識は地理的歴史的な個性をもつ現下の市場経済化の最も重要と考えられる側面を集中的に解明し、その研究成果等を社会に公開するものである。

  プロジェクトTは、「地域経済」の分野である。市場経済を通じて経済効率性が追求され、人口構造の少子化・高齢化の進行するなか、地方の過疎化と都市の過密化の併存をはじめとした地域間格差の拡大がもたらされた。これに対して、産業構造・農業問題・労働市場・人口移動・資金移動・地方公共財供給・福祉と環境など多岐にわたる課題をとりあげ、各分野の研究における有機的連関性を持ちつつ、市場メカニズムを超えた経済システムの分析をはじめ、公平性の観点からも研究を進める。この過程で理論の深化を図るとともに現実への政策提言力を高める。

  プロジェクトUは、「中国経済」の分野である。経済グローバル化と市場経済化は伝統的なアジアの経済発展にも歴史上経験したことのない挑戦であり、その衝撃により社会主義体制からの移行を進めている中国は壮大な実験を行っている.中国経済はどのように市場経済に関わろうとしているのか、それによって日本との経済関係はどのように質的に変化するかという問題を多様なアプローチで研究を進める。

  プロジェクトVは、「経済学説史」の分野である。市場経済化に関わる理論的解明は、学説史的にはヨーロッパにおいて大々的に行われた。それらの洞察や研究の遺産を再検討する必要がある。近代経済学における市場経済論に関わる学説の形成史に焦点を絞り、特にヴィクセル、ベーム・バベルク、ヴィーザー、モルゲンシュテルン、ハイエク、ミーゼスの市場経済をめぐる議論の形成を明らかにする。そして、彼らの議論の形成過程を一次資料に基づいて明らかにし、デジタル化して公開していく。市場経済論関連の資料を利用しやすいように管理して、社会に公開することを意図している。

  このように、本プロジェクトは、市場経済に関わる議論を深めることを共通項に積極的な研究・教育・公開活動を展開することを企画している。各プロジェクトでは、WWWの活用によるORCのサイトを作成し、研究成果やデータ・資料を公開すると同時に、公開講座・シンポジウムを開催実施し、情報を発信していく。また、各プロジェクトの研究成果等を研究書等を公刊する予定である。

  なお、ORC本プロジェクトの選定結果が平成13年11月上旬に届けられたこともあり、本プロジェクトの立ち上げと研究活動の始動に時間を要し、今年度の本格的な研究活動は始まったばかりの状態となった。以下に、本年度の活動内容の報告がなされるが、併せて今後の本プロジェクトの研究計画も述べている。今後の本プロジェクトに対するご指導とご鞭撻をお願いしたい。

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