京都産業大学 ORC Discussion Paper シリーズ

 
NoCHINA-202007年08月)
   
 

 

人民元調整とマクロ政策

 

八木 三木男     

 

 要 約

 

 この論文では、人民元切り上げ問題を中国の国内マクロ経済運営の観点から検討する。近年、中国の貿易収支は、固定相場制のもとで膨大な受取超過を続け、巨額の外貨準備を保有するにいたった。また、貿易収支の不均衡にとどまらず、中国経済の急速な経済発展の影響は、天然資源の獲得、産業素材の価格高騰などによって世界中に及んである。同時に、国内においては、格差拡大、環境問題などの深刻な問題に直面している。

 人民元の切り上げは貿易相手国のみならず、中国にとっても望ましいと見なす見解が一般的になってきている。しかし、「人民元切り上げ」の実現にともなう困難もある。とくに、切り上げのスピードについては、中国国内のマクロ経済環境に対応する必要がある。急激で大幅の人民元切り上げは現実的ではないと考えられるが、人民元切り上げをともなう、やや低めの経済成長へのソフトランディングこそ、中国政府のめざす和諧社会(調和ある社会)への道と考える。日本経済もまた、中国経済の成長率低下に備える必要がある。

 

 

  Keywords :人民元切り上げ、マクロ経済政策、インフレーション


 

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