京都産業大学 ORC Discussion Paper シリーズ

 
NoCHINA-192007年03月)
   
 

 

中国人民元と購買力平価説

 

八木 三木男     

 

 要 約

 

 

 この論文では、中国の人民元切り上げ論争について、「購買力平価説」の観点から検討を行い、その有効性を検討する。

 次のような結論を得る。(1)人民元切り上げ論は、現行の人民元相場が絶対的購買力平価からかなり乖離していることを示唆している。しかし、真の均衡為替レートの水準に関する意見の一致は見られない。(2)長期的には相対的購買力平価説が成立するという一般的な結論は、市場経済の歴史が短いため、まだ検証されていない。(3)中国の場合、経済的な地域格差によって、購買力平価における非貿易財の影響を軽視することができない。すなわち、非貿易財については、内外のみならず、国内においても一物一価は成立していない。貿易財のみにもとづく購買力平価は修正されなければならない。(4)資本自由化が進めば、為替相場は資本取引によって大きく影響を受ける。中国の改革開放政策がその段階に至れば、為替相場は資本取引を含む市場の諸力によって形成されるので、購買力平価説の説明力はさらに弱まる。(5)中国は経済的には発展途上国であり、完全な市場経済を前提とする購買力平価説は適切な政策的指針にはならない。

 


 

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