京都産業大学 ORC Discussion Paper シリーズ

 
NoCHINA-272008年02月)
   
 

中国地域経済発展における税効果

 

岑  智偉  鈴木 博人     

 

 要 約

 

 

 本論文はMendoza et al.(1997)分析方法を用いて、中国地域経済発展における税効果を検証している。特に、分税制改革後の税制体系を中心に、中国の3大税収(資本収入税、労働所得税と消費税)と中国地域経済発展の関係について検証を行い、以下の結論を得ている。(1)全般的に中国の消費税は経済成長に負の効果を与えている。これは明らかに馬(2003)の結論とは異なる。馬(2003)はMendoza et al.(1997)とは全く同じの結論を得ている。消費税の定義に関係するかもしれないが、直間比率などを見れば、中国税収における間接税の比率が直接税を大きく上回り、これはMendoza et al.(1997)の分析対象の国々(OECD諸国)とはかなり異なっている。税制構造といった経済環境が全く違うのに、同じの実証結果が得られるとは非常に不思議に思われる。(2)労働所得税は中国の経済成長に正の効果を与える可能性がある。これも馬(2003)とは異なる。この結論は通常の理論仮設とも異なる。一般的には労働所得税が上昇されると、人々はより多くの時間を余暇に費やし、労働供給水準が低くなるので、経済成長にマイナスな効果を与える。しかし、中国では労働所得水準がまだ低いため、労働所得税による可処分所得の低下は更なる労働供給を上昇させ、経済成長に正の効果を与える可能性も考えられる。もし、事実がそうであれば、税収に悩まされている中国中央政府の地方税である個人所得税などを中央税にする租税政策が賢い選択であるかもしれない。(3)外国による直接投資や貿易依存度が明らかに中国の経済成長に正の効果を与えていることは、いままでの他の研究とも同じであるが、政府最終消費対GDP比も経済成長にプラス効果を与えている点は、意味深い実証結果であると思われる。中国の経済成長の一部は未だに政府支出によって達成されていることがうかがえる。

 

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