要 約
1990年代の半ばより、FDI導入の動機付けとされるdual
gapは中国で観察されず、にもかかわらず、1992年のケ小平の「南巡講話」により、中国は本格的にFDIを導入し、その実績として、20世紀後半から21世紀にかけて、中国に流入するFDIの総額は開発途上国の16%、東アジアの55%を占めるようになった(UNCTAD)。そこで、中国のFDI導入は何を狙い、FDIは中国経済発展に対し、どのような経済的効果をもたらしているのかについて、1990年代後半より、中国国内においてFDIの経済的効果をめぐる議論が行われた。本稿は中国国内で出版された70種類以上の学術専門誌から100ほどのFDIの経済的効果に関する研究論文を用いて、これらの議論(主にFDIの決定要因、FDIと経済成長、FDIのスピルオーバー効果、FDIと国内投資など)についてクリティカルサーベイを行っている。これらの研究の主な結果は以下のようにまとめられる。第1に、FDIの決定要因について、多くの研究はLee
and Hounde(2000)の結論を支持し、特に、市場規模などが中国に流入するFDIを決める大きな要因であると分析されている。第2に、FDIと中国の経済成長に関する研究の多くは、時系列データによる分析であり、殆どの研究では中国のFDIとGDPの時系列データについて非定常性を示す単位根が検出された上、共和分も有意に検定された。そして、Granger
の因果性テストによりFDIがGDPの原因である研究結果が最も多い。その他、マクロ生産関数を特定化することにより、中国のGDP成長に対するFDIの貢献度が大体10%以下である結果が報告された。第3に、FDIとスピルオーバー効果について、Borenstein
et al.(1998)を中国に適応した分析が最も多く、中国でもthreshold
hypothesisが 成立するという結論が得られ、人的資本が25.07%以上でなければFDIによる成長に対する外部効果が現れないという結果が示された。また、外資による技術的スピルオーバー効果を動学的に捉える分析では、外資による技術的スピルオーバーの計測値は1992年と1993年において最も高く、その後は低下していることが示された。第4に、FDIと中国国内投資の関係について、Agoisn
and Mayer(2000)の研究が適応された分析では、地域によりFDIによるクラウディング・アウト(イン)効果が異なる結果が報告された。
Kyoword:
FDI,経済成長,スピルオーバー,crowding
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