京都産業大学 ORC Discussion Paper シリーズ

 
NoCHINA-0120022月)
   
 

Rent-Seeking 活動を伴う中国の R&D 投資と長期成長

岑 智偉

 

 要 約

 

 本論文は中国におけるR&D投資と経済成長の関係をRent-Seekingを伴うR&D成長モデルで検討している。

 まずR&D投資と生産性成長との関係を中国について1952-1992年のデータで検証した結果、次のような事実が確認された。(1) 中国では長年に渡って多大の財政赤字を抱えながら財政力とは釣り合わないR&D投資が行われてきた。(2) 投資の長期的な生産性成長に対する効果がほとんど現れていない。これらの事実をもとに、R&D投資の非効率性は投資主体である国有独占企業によるRent-Seekingによるものと考え、Rent-Seekingを伴う1部門R&D成長モデルを構築し、以下の結論を得た。

  第1に、長期における経済成長率は規模の効果と外部効果に依存するが、Rent-Seekingは外部効果に対する負の影響を通じて経済成長率を低下させる。よって、RentSeekingが広汎に行われている経済では、人口成長率が高くてもR&D投資の経済成長に対する効果は小さくなりうる。第2に、モデルのインプリケーション(数値計算)として、R&D投資の効率性が低いほど経済の均斉成長経路への収束速度は高まるが、成長率は低下する。        

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【掲載:『京都産業大学論集』(社会科学系列)第21号,2004年3月】