京都産業大学 ORC Discussion Paper シリーズ
中国経済の体質変化と国有企業をめぐる諸問題
岡本 光冶
要 約
これまでのORC中国プロジェクトの現地視察・調査でも実感されてきたが、中国経済は90年代の後半から財市場における従来の「過少経済」から「過剰経済」へと大きく体質転換を始めている。現象的には、特に98年以降、7〜8%台のマクロ的高成長が持続する中で、各種の物価上昇率がマイナスとなる真性デフレの発生に現れている。高成長とデフレの共存には、これまで国内市場で支配的であった国有企業の改革が正念場を迎えていることと大きく関係している。同じ国有でも、中小企業の民営化は急ピッチで進行しているが、特に大企業部門の改革は容易でなく、これは地域差も大きく伴っている。
国有の大企業改革をめぐる大きな問題点は、(1)民営化に即した企業資産の評価とその帰属において、大企業であるがゆえに政府の影響力が当分の間持続されざるを得ないこと、(2)このことから、新たな企業統治の仕組みや方法が模索されざるを得ないこと、(3)これまで多分に地域独占的要素を持っていたこの企業において、市場における代替勢力(新たな企業家層の出現、外資企業の進出も含めて)がまだまだ十分育っていないこと、などに深く係わっていると推察される。
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