鈴木 信三 Shinzo Suzuki
理学部 教授

略歴
1960年 愛知県生まれ
1985年 京都大学大学院理学系研究科修士課程(化学専攻)修了
1985-1990年 岡崎国立共同研究機構分子科学研究所 文部技官
1990年 博士号取得
1990-2006年 東京都立大学(現在の首都大学東京)理学部化学科助手
2006年より本学(2007年准教授、2008年より現職)
趣味は街歩き

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研究分野: 炭素ナノ構造体の物理化学的研究
主要研究テーマ: フラーレンや単層カーボンナノチューブ生成過程の解明とその応用

炭素ナノ構造体の物理化学
炭素原子だけからなる構造体には、正四面体型の立体網目構造をもつ”ダイヤモンド”や、 平面層状構造をも”グラファイト(黒鉛)”など、古くから様々な形態(同素体)が知られています。 20世紀の終わり頃、球殻状のサッカーボール型構造をもつC60分子やラグビーボール型構造をもつ C70分子に代表される”フラーレン”や、グラファイトシートを丸めて筒状にした構造で、1μ(1μ(ミクロン)は、 1m(メートル)の、106の1))程度以上の長さをもつ”単層カーボンナノチューブ”, ”多層カーボンナノチューブ”などが発見されて、炭素原子からなる同素体の仲間に新たに加わりました。 これらの物質群は、その大きさ(直径)が約1nm(1nm(ナノメートル)は、1m(メートル)の、 109の1)のサイズであることから、まとめて”炭素ナノ構造体”と呼ぶことができます。 最近では、単一のグラファイト層を特に”グラフェン”と呼んで区別して、 それ自身を対象とした研究も活発に進められています。
これらの炭素ナノ構造体は、その形が面白いばかりでなく、サイズ(直径)やその幾何学的な配置が異なることにより、 その物理化学的性質が大きく変化します。例えば、単層カーボンナノチューブは、その直径やねじれ方をカイラル指数 (n,m)(n,mは整数)を用いて区別しますが、(2n+m)が3の倍数の時に限り、その指数で表される 単層カーボンナノチューブが金属的性質を持つことが分かっています。こうした炭素ナノ構造体がどのようにして 生成するのかを理解すること、またそれぞれの構造体を区別して選択的に作製(あるいは生成後に他の構造体から分離) して、その応用を考えることが、私たちの主な研究テーマになっています。


アーク放電法で作製された単層カーボンナノチューブの作製・精製・評価
実際に得られる”炭素ナノ構造体”は、一般には様々な種類の不純物を含みます。一例として、 アーク放電法で得られた単層カーボンナノチューブを含むススを【図1】に示します。 この試料には、他の炭素ナノ構造体(同素体)以外にも単層カーボンナノチューブの生成で触媒的な役割を 果たす金属微粒子などが含まれており、純物質ではありません。また、単層カーボンナノチューブはお互いに 集まって束状(バンドル)構造を取りやすいため、1本の単層カーボンナノチューブだけを独立に取り出すと いうことは、現在でも非常に難しい作業になっています。
【図1】

最近、このような混合物から、界面活性剤を分散材として用いることにより、単層カーボンナノチューブだけを1本ずつ独立に、 水溶液中に孤立分散させることができるようになってきました。その結果を【図2】に示します。この溶液は、孤立分散した後に 超遠心分離装置を用いて、界面活性剤で覆われた形で孤立分散された単層カーボンナノチfューブを含む上澄み部分だけを 取り出したものです。ここに含まれている単層カーボンナノチューブの中で、半導体的性質をもつものは、そのチューブに 固有なエネルギーの光で励起すると近赤外領域で発光します。【図3】は、その性質を利用して得られた発光マッピングスペクトルです。 図に表れている個々の発光スポットは、特定のカイラル指数(n,m)で表現できる半導体的特性を持つ単層カーボンナノチューブ に対応します。こうした実験を地道に積み重ねていくことにより、どのような作製条件で特定の単層カーボンナノチューブの 生成効率が最適になるか、また得られた単層カーボンナノチューブの直径分布やねじれ方分布がどのように変化するのか、 を調べています。

【図2】 【図3】


研究トピックス
  • フラーレン・単層カーボンナノチューブの生成過程の解明
  • フラーレン・単層カーボンナノチューブの作製、分離精製とその応用
主要論文(5編以内)
  • S. Suzuki, T. Mizusawa, T. Okazaki, Y. Achiba, Eur. Phys. J. D, in press (2009).
    "Mono-dispersed single-walled carbon nanotubes made by using arc-burning method in nitrogen atmosphere"
  • R. Kumashiro, N. Hiroshiba, N. Komatsu, T. Akasaka, Y. Maeda, S. Suzuki, Y. Achiba, R. Hatakeyama, K. Tanigaki, J. Phys. Chem. Sol., 69(5-6), 1206-1208(2007).
    "FET Properties of Chemically modified carbon nanotubes"
  • S. Suzuki, N. Asai, H. Kataura, Y. Achiba, Eur. Phys. J. D, 43(1-3), 143-146(2007)
    "Formation of single-wall carbon nanotubes in Ar and nitrogen atmosphere by using laser furnace technique"
  • Y. Maniwa, K. Matsuda, H. Kyakuno, S. Ogasawara, T. Hibi, H. Kadowaki, S. Suzuki, Y. Achiba, H. Kataura, Nature Mat., 6(2), 135-141(2007).
    "Water-filled single-wall carbon nanotubes as molecular nanovalves"