河北 秀世 Kawakita Hideyo
理学部 教授

略歴
1994年 京都大学大学院工学研究科修士課程(情報工学)修了
1994年 シャープ(株)に就職
1998年 群馬県立ぐんま天文台に転職
2002年 総合研究大学院大学より博士号(理学)取得
2005年 より本学
趣味は食べ歩きと読書


 研究分野: 太陽系始原天体の観測的研究
 主要研究テーマ: 彗星氷から探る太陽系の起源

天文学・惑星科学
天文学は宇宙に存在する様々な天体や宇宙そのものの成り立ち・行く末を研究する学問ですが、その中でも特に私たちの太陽系や他の星のまわりの惑星系について研究する分野を惑星科学ともよびます。
私の研究分野は、特に、わたしたちの太陽系が興味の中心です。 光の速さで何十年、何百年、あるいは何十億年というはるか彼方に存在する星やその集団たる銀河といった天体は、直接、その姿を近くにせまって観測することはできません。 しかし、私たちの太陽系に存在する8つの惑星と多くの準惑星や小天体については、探査機によって、それらを直接、詳細に観測することができるのです。
現在、この宇宙には太陽系のような惑星を持つ星が数多く存在することがわかってきました。それらの惑星系は詳しく観測することはできませんが、太陽系は、そうした惑星系のサンプルの一つとして非常に重要な位置を占めています。太陽系の成り立ちを詳しく調べるには、約46億年前の太陽系誕生時からほとんど変性を受けていない、「始原的な」天体を観測する必要があります。
そうした天体の一つが「彗星」なのです。


彗星氷中の分子における存在比、重水素/水素比、原子核スピン異性体比
彗星は、太陽系が誕生した約46億年前に太陽系外縁部に存在した氷とチリの混じった微惑星(数kmサイズの小天体で、これらが衝突合体することで惑星が誕生したと考えられる)の残存物だと考えられています。 そのため、彗星氷の成分を調べることは、46億年前の太陽系に存在した物質を調べることになるのです。
私は、彗星氷中に含まれる様々な分子(主成分は水で、次いで一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、メタンなども種々の有機分子が含まれます)の成分比や、特定の分子に含まれる重水素(普通の水素原子より重いもの)の割合といった点に注目して、彗星氷に含まれる物質がどのようにして生成されたかを調べています。

 彗星氷に含まれる種々の分子の成分比は、それらの分子が、どのような成分のガスから、どのような温度・密度の環境で生成されたのかといったことに依存しています。 特に、H2Oのように水素原子を含む分子に対して、水素原子が重水素原子(普通の水素原子の2倍の重さがあります)に置き換わった分子(この場合はHDO)が存在する割合は、温度環境に大きく依存しています。
また、H2Oには、オルソ・H2Oとパラ・H2Oという二種類の水分子がありますが、これらの存在比率も、分子が形成された時点での温度環境を探る重要なカギと考えられています。 これまでの研究から、太陽系は絶対温度約30度(−240℃)という低温度環境で進化した物質から形成されたと考えられます。

 こうした分子は、主に近赤外線波長域(波長2〜5ミクロン付近)の光を吸収したり放出したりする性質があり、近赤外線光を観測することが必要です。 しかし、こうした波長の光は、地球の大気中に存在する水分子などにも吸収されやすく、できるだけ高い山の上から(つまり空気の薄いところから)観測する必要があります。 そのため、主に観測は、ハワイ島マウナケア山の山頂(地上4200m)に設置された日本の「すばる望遠鏡」など、光を集める鏡の直径が8m以上という巨大な望遠鏡で行われます。


研究トピックス
  • 彗星氷中の有機分子探査
  • 彗星氷中のメタン分子の重水素/水素比から探る分子形成温度
  • 彗星氷中のH2O、NH3、CH4分子の原子核スピン異性体比 から探る分子形成温度
主要論文(5編以内)
  • Kawakita Hideyo, Kobayashi Hitomi, Astrophysical Journal, 693, 388-396 (2009).

  • "Formation Conditions of Icy Materials in Comet C/2004 Q2 (Machholz). II. Diagnostics Using Nuclear Spin Temperatures and Deuterium-to-Hydrogen Ratios in Cometary Molecules"
  • Kanda Yuichi, Mori Atsushi,; Kobayashi Hitomi, Kawakita Hideyo, Pub. Astron. Soc. Journal, 60, 1191-1198 (2008).

  • "Optical Spectroscopic Observations of Comet 73P/Schwassmann-Wachmann3"
  • Bonev Boncho, Mumma Michael, Kawakita Hideyo, Kobayashi Hitomi, Villanueva Geronimo, Icarus, 196, 241-248 (2008).

  • "IRCS/Subaru observations of water in the inner coma of Comet 73P-B/Schwassmann Wachmann 3: Spatially resolved rotational temperatures and ortho para ratios"
  • Kobayashi Hitomi, Kawakita Hideyo, Mumma Michael, etc., Astrophysical Journal, 668, L75-L78 (2007).

  • "Organic Volatiles in Comet 73P-B/Schwassmann-Wachmann 3 Observed during Its Outburst: A Clue to the Formation Region of the Jupiter-Family Comets"
  • Kawakita Hideyo, Jehin Emmanuel, Manfroid Jean, Hutsemekers Damien, Icarus, 187, 272-275 (2007).

  • "Nuclear spin temperature of ammonia in Comet 9P/Tempel 1 before and after the Deep Impact event"